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MMS戦記 外伝「敗北の代価」 「敗北の代価 11」 注意 ここから下は年齢制限のある話です。陵辱的な描写やダークな描写があります。 未成年の方は閲覧をご遠慮下さい。 □ 重邀撃戦闘機型MMS「リカルダ」 SSSランク 二つ名「ミョルニル」 オーナー名「春日 凪」♀ 20歳 職業 神姫マスター 真っ赤に燃え滾るヒートナギナタを振り回し,戦国時代の武将のように名乗りをあげるリカルダに対峙する神姫たちは、ぽかんを口を開けて呆然と立ち尽くす。 オーナー1「な、なんだァ!?あいつ!」 砲台型C「あれがSSS級の化け物神姫、リカルダか」 悪魔型「び、びびるな!!!敵は一騎だァ!!!」 一瞬、神姫たちに動揺が走ったが、すぐさま体制を建て直し、リカルダを取り囲むようにじりじりと移動する。 春日はバトルロンドの筐体に備え付けられているタッチパネルを操作し、状況を把握する。 春日「残り、88機!敵は3つの集団に分かれている」 春日はマーカーで3つのくくりを作る。 春日「まずは集団A、陸戦タイプの神姫を中心とした大集団、数は50、どうせこちらの速度にまともについていけない、適当につぶしておけ」 リカルダ「イエス」 春日「次に集団B!!空戦タイプの神姫を中心だな、数は1ダース(12機)、機種はアーンヴァル、エウクランテ、アスカが多いな・・・まずはこいつらから血祭りにあげろ、皆殺しだ!」 リカルダ「OK」 春日「最後に集団C・・・砲戦タイプの神姫ばかりだな!数は20、機種は戦艦型4隻、戦車型6両、砲台型10台!鈍亀ばかりだ、うまく誘導して同士撃ちにさせろ」 リカルダ「了解」 春日はバンっと筐体を叩く。 春日「見敵必殺(サーチアンドデストロイ)!!!見敵必殺だ!!立ちはだかるすべての障害を排除しろ!」 リカルダ「Sir,Yes sir MyMasterrrrrrrr」 ヒュイイイイイイイイイイイイイイイ リカルダのリアパーツに装備されている巨大な素粒子エンジンが緑色に輝く粒子を撒き散らし唸り声を上げる。 巡洋戦艦型A「奴を倒せば兜首だ!賞金を手に入れて富と名声を手に入れろ!」 装甲戦艦型A「支援射撃を開始する!全神姫突撃突撃ィ!!」 数隻の戦艦型神姫が主砲をリカルダに向けて発砲するのを皮切りに再び神姫たちが吼えるように声を上げて、武装を手に掲げてドッと津波のように襲いかかる。 神姫「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」 リカルダはまったく臆することなく、巨大な素粒子エンジンを全開に吹かして真正面から突撃を仕掛ける。 リカルダ「あは、あはっはは!!この程度の数の神姫でこの俺を倒せるとでも?笑わせるッ!!!」 轟とエンジンを轟かせてリカルダは燃え盛るナギナタを引っ掴んで迎え撃つ。 砂漠を砂埃を立ち上げて、真っ先に攻撃を仕掛けてきたのは、ハイスピードトライク型 アーク、ハイマニューバトライク型 イーダ、モトレーサー型 エストリル、クルーザー型 ジルリバーズのバイク使いの4神姫だった。 バイク使いの4神姫はリカルダの姿を認めると、ばっと散開し一斉に手持ちのマシンガンやキャノン砲、ハンドガンで射撃を開始する。 リカルダ「遅い遅すぎるぜ、それで速く動いているつもりか?」 リカルダは地面スレスレをホバリングするように砂山や岩を盾に攻撃を回避し、ズンと地面を強く踏みしめると、同時に地面に巨大な亀裂と穴が穿つ。 パンッと空気が爆ぜる音がしたと同時に、ハイスピードトライク型 アークの紅の武装が異常な形にくにゃっと歪みバラバラに分解されて吹き飛んだ。 □ ハイスピードトライク型 撃破 真横を走っていたクルーザー型のジルリバーズの目が見開かれる。 ジルリバーズ「なっ・・・」 ぐしゃぐしゃに潰れたトライク型の後から破壊音が衝撃波となって届く。 ドギャアアアアアアアアアン!! チカチカと何かが光ったと思った瞬間、モトレーサー型 エストリルの薄いピンク色の体が黄色い閃光に飲み込まれて爆散する。 □ モトレーサー型 撃破 ジルリバーズ「あ、あああ・・・」 彼女の眼前で瞬く間に僚機が沈む。 あまりにも速い、度外れた速さ、圧倒的な凄まじい破壊の力に彼女は驚愕し見届けることしか出来ない。前方でハイマニューバトライク型イーダが変形を解除し、大剣を構えて対抗しようと、リカルダに攻撃を仕掛けようとするが・・・ 次の瞬間、ジルリバーズの横を薄緑色の塊が軽々と宙を舞いすぐ脇を通りぬけていく。 風が唸る。 ゴキン 鈍い金属音が聞こえる。その音の正体を最初は理解できなかったが、崩れ落ちるバラバラになった自分の体がジルリバーズの視界に移ると意味を理解した。 ジルリバーズ「は・・・はや・・・速すぎる」 □ クルーザー型 ジルリバーズ 撃破 ズドンズドンズドン!! 戦艦型神姫の砲弾がリカルダの周囲に着弾するが、リカルダはまったく意に介さず無視する。 リカルダ「おいおい、なんだ?その動きは舐めているのか?あああん?的撃ちじゃねーんだぞッォ!!!!!」 リカルダは顔を歪ませて新たな敵に向かって突進する。 音速を超え、超高速の剣戟に、対峙する神姫たちはまったく捕捉しきれなかった。 悪魔型「うおおおおおおおおおお!!」 巨大な刀を携えた悪魔型が雄叫びを上げて強化アームを振りかざし突撃するが、リカルダは悪魔型が刀を振るう前に胸部を突き殺す。 □ 悪魔型 ストラーフMk-2 撃破 間髪いれずに今度は巨大なハンマーを携えた白い悪魔型とソードを構えた黒い悪魔型が躍り出るが、リカルダは副腕のレールキャノンをくるんと廻して、胸部を正確に撃ちぬく。 □ 悪魔型 ストラーフ・ビス 撃破 □ 悪魔型 ストラーフ 撃破 脇を小柄な2体の神姫が槍と剣を携えて飛び出してきたが、リカルダは2体まとめて燃え盛る紅蓮の炎を纏ったヒートナギナタで文字通り薙ぎ払った。 □ 夢魔型 ヴァローナ 撃破 □ 剣士型 オールベルン 撃破 樹脂の溶ける焦げ臭い不快な匂いを撒き散らして四散する2体の神姫。 リカルダの強烈な攻撃の様子はさながら嵐のようであった、音よりも速いリカルダの攻撃は空気を引き裂き、爆ぜ、対峙する全てのものを打ち砕く。 次々に撃破のテロップが流れる。 まるで音楽を奏でるかのようにリカルダは縦横無尽に戦場を駆け回り、刈り取るように神姫を撃破していく。 □ 犬型 ハウリン 撃破 □ 猫型 マオチャオ 撃破 □ リス型 ポモック 撃破 □ フェレット型 パーティオ 撃破 □ ウサギ型 ヴァッフェバニー 撃破 □ 騎士型 サイフォス 撃破 □ 侍型 紅緒 撃破 □ 花型 ジルダリア 撃破 □ 種型 ジュビジー 撃破 □ サソリ型 グラフィオス 撃破 春日「30、31・・・」 春日はにやにやしながら腕を組んで数を数える。 怯えた白鳥型が大剣を盾に悲鳴をあげて後ずさるが、リカルダは大剣をガードの上から叩き割った。 ズン・・・ 真っ二つに引き裂かれた白鳥型の表情には驚愕の念が浮かんでいた。 彼女は決して弱い部類の神姫ではなかった。数多の戦場を先陣切って誉高く駆け、敵を討ち取ってきた武装神姫である。 だが、違う。 こいつは違う。 一刀両断されて始めて違いに気がついた。 こいつは普通じゃない。 白鳥型「ば・・・化け物め・・・」 □ 白鳥型 キュクノス 撃破 春日「32!!総数の3分の1を殲滅した、残り68!さっさと片付けるぞ」 春日は筐体の画面を操作して状況を把握する。 リカルダ「だめだ、弱すぎる・・・お話にならない」 参加していた神姫のオーナーたちはたった数分間で100体いた神姫の3分の1が潰滅した事実にただ言葉も無く息を呑む。 いま眼前で繰り広げられた戦い、リカルダの桁ハズレの強さ。 次々となすすべもなく撃破されていった仲間たちを見て陸戦主体の残った神姫たちは完全に戦意を喪失して、武装を放り出して逃げ始めた。 カブト型「だ、だめだァ!!こんなの勝ってこないよ!」 クワガタ型「ひ、ひィいいい」 ヤマネコ型「やってられるかよ!!!」 がしゃがしゃと手持ちの武器を捨てて逃げようとした瞬間、後方からチカチカと青白い光が瞬く。 建機型「!?」 ドッガアズガズッガアアン!! 装甲戦艦型A「撃て撃て!!撃ちまくれェ!!」 巡洋戦艦型A「逃げる奴は敗北主義者だ!!!敵もろとも攻撃しろ!!!」 重装甲戦艦型A「奴を倒せば1億円なんだぞ!!断じて引くな!!後退は認めん!!」 数隻の戦艦型神姫が味方もろとも無差別に砲撃を始め、瞬く間にフィールド内は阿鼻叫喚の地獄絵図に変わった。 ドンドンッドオドドン!!ズンズウウン・・・・ カブト型「ぎゃあああああああ!!」 虎型「ウワァ!!」 丑型「いやああああああああああ!!撃たないで撃たないでェ!!!!!」 猛烈な艦砲射撃がリカルダと周囲にいる神姫たちを巻き込んで行なわれる。 戦艦型の取り巻きの戦車型、砲台型も味方を撃つことに戸惑っていたが、手段を選んでいる場合ではないと悟ったのか、一緒になって見方もろとも攻撃を始めた。 □ 建機型 グラップラップ 撃破 □ 虎型 ティグリース 撃破 □ 丑型 ウィトゥルース 撃破 □ ヘルハウンド型 ガブリーヌ 撃破 □ 九尾の狐型 蓮華 撃破 次々とフレンドリーファイヤーの表示が出ながら撃破のテロップが踊る。 瞬時に周りは地獄と化した。その光景は凄惨そのものだった。目の前で多くの神姫たちが生きたまま焼かれ、重症を負い、そして粉々に砕かれて宙を舞った。 ズンズンズン・・・・ ものすごい爆煙と砂埃で砲撃地点は黒茶色の巨大なキノコ雲が立ち上り、ボンボンと神姫が爆発する音と赤い炎が巻き起こる。 上空を数十機の航空MMSが心痛な面持ちで眺めていた。 天使型「下は地獄ですね」 セイレーン型「うわあァ・・・」 ワシ型「イカレ野郎もろとも吹っ飛ばしてしまえ!!」 ワシ型が手を掲げてファックサインをする。 ドッギュウウウム!! 戦闘機型「おぐ・・」 戦闘機型の胸部を黄色い閃光が貫き、爆発する。 □ 戦闘機型 アスカ 撃破 爆煙と砂埃の中から勢いよくリカルダが飛び出し、真っ赤に燃え盛るヒートナギナタでワシ型MMSを一刀両断で切り捨てる。 □ ワシ型 ラプティアス 撃破 リカルダ「コイツァ最高だぜ、ふ・・・恥も外聞もなく味方もろとも攻撃してくるとはなァ・・・」 リカルダは笑いながら次々と航空MMSをハエのように叩き落としていく。 □ コウモリ型 ウェスペリオー 撃破 □ 戦乙女型 アルトレーネ 撃破 天使型「このおおおおおおおおおおおお!!」 天使型の一機が、上空からライトセイバーを構えて突撃してくるが、 リカルダは最小限の動きで回避し後ろを取る。 リカルダ「はずしやがったな!まだまだガキの間合いなんだよ!」 天使型「そ、そんな!!うわああああ!!」 ズッドン!! □ 天使型 アーンヴァル 撃破 天使型の頭部を跳ね飛ばした次の瞬間、リカルダを含む周囲の航空MMSたちにむけて葉激しい強力なレーザー砲の一斉射撃が加えられる。 ビシュビシュウウビッシュウウウウン リカルダ「おわっ!!」 あわててリカルダが回避する。 ズンズンズン!! □ 天使型 アーンヴァル 撃破 □ 天使型 アーンヴァル・トランシェ 撃破 □ 天使型 アーンヴァルMk-2 撃破 □ 戦闘機型 アスカ 撃破 リカルダの回りを飛んでいた航空MMSを強力なレーザーが貫き、空中に炎 出来た光球を作る。 重装甲戦艦型「ヘタクソォ!!貴様らどこを狙っている!!」 巡洋戦艦型A「ウルセェ!てめえが撃てっていうから撃ったんだろがァ!!!」 装甲戦艦型A「畜生畜生!!」 装甲戦艦型B「ひゃっはああーーー!!!もうだめだァ!!」 巡洋戦艦型B「なにをしている攻撃の手を休めるな!!!」 またしても後方にいる戦艦型神姫の一群が味方もろとも巻き込むのも承知の上で砲撃を加えてきたのである。 1度ならず2度までも、味方を巻き込む非道な攻撃を行い続ける神姫たちに観客たちはブーイングを鳴らす。 観客1「お前らさっきからナニやってんだよ」 観客2「このクズヤロウ!!さっさとしとめろ!」 観客3「誤爆誤射ばっかりやんてんじゃねーんだぞ!!このダボォ!!」 観客4「こいつらさっきから味方撃ちしかしてねえーーーーー」 観客5「なにがしてーんだよ!!このクソヤロウ!!」 グラスやゴミをフィールドにいる戦艦型に向かって投げつける観客たち。 オーナー1「うるさい!野次馬ァ!!」 オーナー2「黙れ黙れ!」 オーナー3「どーしようが俺たちの勝手だろ!」 オーナー4「戦いに誤射誤爆はつきものだろが・・・ボケが!」 オーナー5「装甲戦艦!!副砲撃て!!!あの野次馬連中を黙らせろ!!」 装甲戦艦型B「了解、モクヒョウ カンキャクセキ 撃ちかたーーーーーーーーーはじめ!!」 あろうことか、戦艦型神姫のうちの一隻が観客席に向かって副砲で発砲しはじめたのである。 ズンズンズズン!! 観客1「うわあああああああ!!撃ってきたぞ!!」 観客2「キャアアアアアアアアア!」 観客席の2階の中央のテーブルに砲弾が命中し、料理が爆発して飛び散る。 ドガアアアン!! 2階の観客席で春日たちの戦いを観戦していた神代の顔にべちゃっりとケーキのクリームが降りかかる。 脇に立っていたルカが悲鳴をあげる。 ルカ「きゃああ!!マスター大丈夫ですか!!」 神代が顔に付いたクリームを手で拭き取り舌でぺろっと舐めて片つける。 神代「大丈夫だ、問題ない」 バトルも観客席も戦艦型神姫の無差別な艦砲射撃で大混乱になる。 司会者の東條があわててマイクで放送を行なう。 「観客の皆さんはフィールド上の神姫にモノを投げないでください!!フィールド上の神姫は観客の皆さんに攻撃しないでください!!危険です」 フィールドにいる戦艦型が反論の激を飛ばす。 巡洋戦艦型A「最初に攻撃してきたのはアイツラだろ!!これは正当な反撃行為!自衛のための防衛行動だ!!」 装甲戦艦型B「戦艦に喧嘩売るとは上等じゃねえか!!ぶっ殺すぞ!!!!」 観客3「こいつらなんとかしろよ!!」 観客4「危ない!!危ない!!危ないよ!!」 観客5「おまえらは一体誰と戦ってんだ!!このボケカス!!」 春日はアッハハハと大声を上げてパンパンと手を叩いて喜ぶ。 春日「すばらしいこれこそ混乱だ!!戦場に混乱はつきもの!!最高じゃないか!!」 リカルダ「さあて・・・と残りはC集団のみ、ちゃっちゃと終わらせてやろう」 リカルダはヒュヒュンとナギナタを振り回し、突撃する用意に移る。 戦艦型神姫の一群と戦車型、砲台型が多種多様な砲口をリカルダに向ける。 戦車型A「パンツァー1より全パンツァーへ、敵は高速戦闘に特化した航空MMSだ、対空榴弾装填!!穴だらけにしてやれ」 戦車型B「パンツァー2了解」 戦車型C「パンツァー3了解」 戦車型D「パンツァー4了解」 砲台型A「砲撃モードに移行!焦るなゆっくり狙って確実に当てろ!」 砲台型B「畜生!ブチ落としてやる」 砲台型C[負けネーゾ] 重装甲戦艦型「全艦、全砲門開けェ!!火力で磨り潰せッ!!!!」 巡洋戦艦型A「火力とパワーはこちらの方が上だ」 装甲戦艦型A「一億円は俺のものだ」 巡洋戦艦型B「くそったれ、やってやる」 装甲戦艦型B「蜂の巣にしてやる」 ギラギラと目を光らせる大砲を主兵装備とする武装神姫たち 。 戦艦型神姫は巨大な体に据付けられた主砲をゴリゴリと動かす。一撃でも命中すれば神姫を粉々に粉砕できる強力なレーザー砲を搭載し、全身に対空機関砲とミサイルを装備している。単純な火力だけでは戦艦型神姫は最強クラスの戦闘能力を有する。また分厚い装甲に守られ、撃破するのは非常に困難だ。 戦車型神姫は戦艦型とはいかないまでも、強力な戦車砲とそれなりの厚い装甲を備えている。また何台かの同型の戦車型とコンビを組んで安定している。 砲台型もがっしりと地面に腰を下ろし、砲撃モードに移行し、優秀なFCSによって高い命中率と速射性能を有した滑空砲を搭載し待ち構える。 大型の戦艦型神姫、中型の戦車型、小型の砲台型のバランスの取れた鉄壁の布陣で、リカルダを待ち構える20機あまりの重武装の神姫たち。 リカルダとは対照的に、機動性を完全に最初から捨てて、がっしりと待ち構える神姫たちに隙はなかった。 こいつらは、味方ですら遠慮なく攻撃する下種だ。だが、その分勝つことには躊躇せず破壊的なオーラを纏っていた。 間違いなく強敵、そう感じ取った春日は内心、ほくそ笑んでいたが、命令を下す。 春日「大砲屋風情が調子に乗るなよ・・・リカルダ!!遠慮はいらん!!攻撃しろ!」 リカルダ「イエス、イエスマイマスター」 ぐっと身を固めるリカルダ。 さっきまで野次を飛ばして騒いでいた観客たちも一斉に押し黙る。 そしてひそひそと話し声がもれる。 観客1「まさか本当にあの砲火の前に突っ込むんじゃないよな?」 観客2「ありえんだろ?あの完璧な布陣になんの策もなしに突っ込むのは自殺行為だ」 観客3「あの陣形は点や線の攻撃なんて生温いものじゃない、面での攻撃だ」 観客4「面制圧か・・・この猛砲撃を掻い潜って奴らを殲滅できるとしたら、文字通り化け物だ・・・そんな神姫がいるのか?」 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>[[]] 前に戻る>「敗北の代価 10」 トップページに戻る
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『大魔法少女』-1/3 「君は暇人だな」と神様が唐突に吐いた暴言に、すれ違う他人に舌打ちをされるくらいムカついた。 いつのことだったか、バトル観戦していた時に通りがかったウェスペリオーの武装が肩に当たり、文句を言ったら舌打ちされてリアルバトルに発展したことがあったけど、今のムカつき度合いはその時くらいのものだ(ケンカ両成敗で神姫センターを1ヶ月出入り禁止になったけど、高級そうな武装をセイブドマイスターでブチ抜いてやって大満足だった)。 漫画をめくる手を止めず、私のほうを見向きもしないくせに、暴言は確実に私をターゲットにしていた。 「なによ、藪から棒に」 「藪から棒も蛇もあるもんか。僕がこうして暇つぶしに来てやった時は必ず漫画を読むか二度寝してるじゃないか。生きてて楽しいのか」 確かに私は今、漫画を読んでいる。 先週マスターが買ってきた『ストライクウィッチーズ』は私と同じ装備の女の子が世界の命運を賭けた戦争で活躍する傑作で、何度でも読み返したくなる。 特にトモコっていうキャラが私と瓜二つということもあり、『ストライクウィッチーズ』は今、私の中で密かなムーブメントを巻き起こしていた。 そんなことは、どうでもいい。 「なんで漫画読んでるだけで人生を否定されにゃならんの? ねえ?」 「人生じゃないだろ、暇人生だ」 漫画を思いっきり投げつけた。 ニヤニヤしたオールベルンはそれをひらりと躱した。 「あんただって漫画読んでるでしょうが!」 「おいおい僕は神様だぜ。二度寝しようが漫画を読もうが、何したって許されるに決まってるだろ」 積んであった漫画をもう一冊抱えて投げた。 神様も再び躱し、あくまでニヤニヤした表情を崩そうとしない。 「戦場を住処とする武装神姫は一日中トレーニングに明け暮れるもんだと思っていたが、違うのか」 「そんな努力家なんてほんの一握りよ。バトルで緊張しっぱなしなんだから、それ以外は人並み以上に息抜きしたくなるもんなの」 「人並み? 暇人並みの間違いだろ」 「やけに突っかかってくるじゃない。なんなの? 死ぬの? 私はリアルバトルでも全然構わないのよ」 「そんな強気こと言っていいのか。僕のメンテ無しじゃ、トレーニング用のネイキッドにすら苦戦するんだろう」 「んなワケあるかい! 3秒で倒せるわ!」 これは誇張でも何でもない。 そもそもバーチャルトレーニングで使える練習用ネイキッドは無料お試し版しかなく、のっそり動く相手ではセイブドマイスターの調整くらいにしか使えない。 有料版ならネイキッドの武装や強さのレベルを自由に設定できるらしいのだが……そんな贅沢品に手を出せば、代わりに弾薬すら買えなくなってしまって本末転倒だ。 これでも私は、消耗品を補充してくれることについてはマスターに感謝している。 だから有料版をおねだりはしないし、無駄に弾を消費するトレーニングもしない、というのが、私が積極的にトレーニングをしない理由だ。 そんな事情を知ってか知らずか(いや知るはずないんだけど)、神様は「まあネイキッド云々は置いといて」と自分で言ったことを軽く流してしまった。 「君は僕との約束の最中だぞ。人間に昇華するためにはあと六人の神姫を倒さねばならない。しかも次の相手は知らぬ者のない強敵『大魔法少女』だ。漫画を読む時間どころか寝る間すら惜しんで特訓に励むのが普通だろう」 「付け焼刃の特訓をしたってどうにかなる相手じゃないわよ。それにね、あんたはいつも夜中と朝だけココに居座ってるけど、私はやるべきことは日が高い昼間にやる主義なの」 神姫の皆が皆、ゲームのキャラのように部屋を掃除したり、戦いに明け暮れたり、事件を追いかけたり、マスターとキャッキャウフフしていると思うのなら大間違いだ。 身長が15cm程度ってだけで人間と変わらない私達は、いろんなことをやる。 私にしても、この後の用事が今から楽しみでしかたがない。 誰かに惚気るように話したくなったりするのだが、神様は「ふうん」と興味無さそうにつぶやき、漫画から目を離そうとしない。 というかコイツ、さっき私のことを「暇人」と言ったのも、呼吸をするような思いつきで私を貶したかっただけじゃないのか。 自分が一番の暇人のくせに。 ◆――――◆ 職でも探しに行くのか、マスターは朝から出かけていることが多い。 神様もいつものように、正午を過ぎると、読み散らかした漫画を片付けずにどこかへ行ってしまった。 今からの時間は、私の人生――いやさ神姫生が最も潤う時だった。 鏡に映った自分の姿を念入りにチェックしていく。 「髪よーし。服よーし。ストライカーよーし」 最後に頬をパンと叩くことで引き締め、ストライカーに点火した。 小窓まで飛び、鍵を空けて窓を開け放つと、澄んだ空気が部屋に流れ込んできた。 大きな深呼吸で体内の淀んだ空気が浄化される。 「さあ、行きますか!」 邪魔するものの無い、高く、広く、そして青い空へ。 せっかくのフライト日和だし、今日はいつもと違うコースを飛んでみようかしらん。 少しくらい遠回りをして時間がかかるのも、たまには乙というものだ。 ハルと会う約束があるといっても、日時や時間まで決めているわけじゃないんだから。 ◆――――◆ 窓からコッソリ中を覗くと、ハルはいつものように文庫本を広げていた。 首元にポニーテールを垂らし、神姫には大きすぎる文字を追うその姿をずっと見ているだけで日が暮れてしまいそうだ。 なんとか目を離し、毎度の義務のようにワンルームの中を見回しても、やはりあの人は不在だった。 私のマスターとは違って仕事が忙しいあの人は、夜ですら不在なことが多いらしい。 会えるチャンスは多くないのだ。 つい溜息をつきたくなるが、グッとこらえて窓をノックした。 私はハルに会いに来たんだ、落ち込む理由なんて最初からない。 頭を上げたハルが窓の鍵を空けて、中に入れてくれた。 「やあ、今日はいい天気だな」 これである。 この声である。 何度聞いても飽きることのない、凛々しい声を聞くために私はここまで来たのだ。 「いい天気、って言っときながら部屋で本読んでるじゃない」 「今日はあなたが来る予感があったんだ。私を連れ出してくれるんだろう? なら、お楽しみは取っておかなくては」 これである。 この微笑である。 何度見ても飽きることのない、アスファルトに力強く咲く花のような表情を見るために私は生まれてきたのだ。 「えへへ。ねえ、ハ~ル?」 「ん、なんだ」 「ううん、呼んだだけ」 「ははっ、おかしなやつだな、ホノカは」 これである。 このハルである。 世界中の映画館で人々を虜にしてしまう大女優を独り占めしている気分だ。 戦乙女型アルトレーネ。 各神姫メーカーがこぞって軽装備、低価格神姫を発売していたライトアーマーブームをぶった切るように現れた、重装備の高級機種。 私の生みの親、フロントラインが天使・悪魔型の改良を急いだあまり中途半端な装備で世に送り出し、後に『フルアームズ』が完全版商法と揶揄された原因は、これまでの武装神姫の性能を覆す戦乙女型に対抗したことにあったとかそうでないとか。 コストに見合った性能は期待を裏切らず、未だ品薄の状態が続いている。 その一方で、発売当初に戦乙女の幻想を叩き割ったAI「なのです」や、近所の神姫センターでは『第n次戦乙女戦争』が頻繁に勃発するなど、批判が絶えることもない。 そんな天然ボケ娘――アルトレーネの中で唯一、本物の戦乙女となり得たのが、ハルヴァヤだ。 ロット生産されたアルトレーネとは思えない気高さ。 「……カ」 瞳の奥で静かに燃える炎。 「……ノカ」 ハルの炎にこの身を焼き尽くされたい。 ハルにだったら、私は――。 「おい、ホノカ」 「は、はいっ!? なんでしょう」 気がつくとハルが私の顔を覗き込んでいた。 キスしてもいいだろうか。 「どうしたんだ、急に気が抜けてたぞ。調子でも悪いのか」 「う、ううん、なんでもない。そろそろ出かけよっか」 頷いたハルは並べてあったスカートアーマーを装着して、鷲のように大きく広げた。 背中から翼のように広げるのではなく、あくまでスカートアーマーのままで空を飛ぶ――これがハルの、訳ありな飛行形態なのだ。 陸上戦だけでなく空中戦も可能なアルトレーネだが、地を蹴っての戦闘に特化してきたからか、ハルは飛行を大の苦手としていた。 それを聞いた私が、空を飛ぶスペシャリスト(自称)であるこの私が、飛行のコーチを買って出たのだ。 有り体に言えば、ハルと優雅な空中散策――つまりデートをする口実を得たのである。 先に離陸した私を追うようにハルも飛び上がったが、勢い余って私を追い越してしまった。 ハルの翼じゃ私のストライカーのようにはいかないとはいえ、まだまだ自在に空を飛ぶには慣れが必要なようだ。 大回りに旋回して戻ってきたハルは肩から紐で鍵を下げている。 「すまないが、窓を閉めてくれないか。私が近づくとガラスを傷つけてしまいそうなんだ」 窓を閉めて、ハルがリモコンで鍵をかけた。 と、ふとマスターの部屋の窓を開けっ放しだったことを思い出した。 「……ま、いいか」 ◆――――◆ 最初はどう贔屓目に見ても、ハルの飛び方は褒められたものではなかった。 初代アーンヴァルよりも大きな翼はハルの手に余り、風が吹けばそちらに流され、逆方向に吹けば舵を取れずに失速、数メートル下のアスファルトに突進していった。 泳げない子の手を取ってバタ足を練習するイメージでいた私は、飛行訓練がそんなキャッキャウフフしたものでないことを初めて知った。 空中で溺れそうになるハルを抱きしめる幻想など、しょせん幻想でしかなかったのだ。 私のような空を飛ぶために生まれてきた神姫と、そうでない神姫との間には、これほどまでの差があるらしい。 いや、アルトレーネは地上戦がメインの神姫だけど標準で空も飛べる仕様だし、ハルだけが特別なんだろう。 他は優れてるのに、天は二物を与えなかったのか、飛行に関してはちょっと悪い方向に特別、というか。 「嫌ってくれてもいいから、私の言うことをちゃんと受け止めてね――ハル、あなたには飛行の才能が無いわ」 断腸の思いでキッパリと告げると、ハルはがっくりと肩を落としてしまった。 でも誰にだって得意不得意はあって天は二物を与えないから云々、と言おうとしたところで、ハルは急に頭を上げ、それを勢い良く下げた。 「私に才能がないのも、迷惑なのも分かっている。だが頼む、どうしても空を飛びたいんだ」 「や、やめてよ、頭を上げて」 「絶対に空を自由に飛ぶ翼が必要なんだ。ギンとの一戦といい、これ以上あなたに頼ってはいけないのは分かっている。しかし――」 「分かった分かった、分かったから頭上げてってば……理由は聞かないけど、私がコーチを断ったって一人で練習するつもりでしょ? 危ないからやめろって言っても聞く耳もたなさそうね」 済まなさそうにハルは頷いた。 こんな顔をされて、ノーと言える飛鳥なんていない。 「言っとくけど、今のままじゃ地面に激突して粉々になるのが目に見えてるから、練習じゃ容赦しないわよ。最低でもこの『セイブドマイスター』と空中格闘戦でタメを張れるまで続けるからね」 「ああ、恩に着る。これからよろしく頼む」 ぱぁっと明るくなるハルの表情の眩しさが、この時ばかりは痛かった。 城尊公園の望楼を貸し切っての飛行訓練は、苛烈を極めた。 「そっち地面! 地面に向かって飛んでどうするのよっ!?」 「う、上はどっち、うわああああああああああっ!」 追いつけない速さでハルが芝生に急降下していく。 コンクリートよりマシといってもあのスピードじゃ助からない。 もうダメだ! と思ったその時。 ハルは翼を変形させてスカートアーマーに戻した。 身体を半回転させて姿勢を立て直し、空気を踏むようにエアダッシュで制動をかけた。 落下の勢いは完全には殺しきれなかったが、私がハルに追いつく余裕ができる。 手を取り合って、芝生につっ込みはしたが、なんとか不時着に成功した。 「はぁ、はぁ……す、すまない。今のは本気で死を覚悟したよ」 「どうして、ケホッ、うぺっ、土が口の中に……飛行形態の時だけパニックになるのよぉ」 「自分でも、分からないんだ……すまない」 空を飛ぶ才能がなくても、練習すれば最低限、遊覧飛行くらいはできるようになる――そう思っていたのだが、練習を繰り返すうちにそれ以前の根本的な問題が見えてきた。 どうしてだかハルは、スカートを翼に変えるフリューゲルモードになるとパニックに陥ってしまうのだ。 しかも空を飛ぶ時だけならまだしも、実は地に足が付いている時でさえ、翼を広げた瞬間から顔をこわばらせてしまうらしい。 空を飛ぶことを怖がっているわけではない。 さっきのようにスカートを通常形態に戻せば落ち着きを取り戻してくれるのだ。 元々ハルは決して空中戦が不得意というわけではなく、エアダッシュで空戦型を撃墜するところを何度も見ている。 さらにアーマーの使い方だって言うまでもなく自由自在だ。 だというのに。 「背に翼があると、とてつもない不安に襲われるんだ。絞首台のロープが首にかかっているような……変なことを言っているようだが、この例えが一番的確なんだ」 らしくもなくブルッと震えるハルを見れば、それが嘘でないことは明らかだった。 アーマーに不具合でもあるのかと、試しに私がアーマーを借りて装備してみたが、問題なく飛ぶことができた。 「それは生まれつきなの? ハルヴァヤとして目覚めた時からの体質?」 「いや、私はあまり飛行形態になることはなかったが、少なくとも起動してしばらくはこんなことはなかった。だが半年ほど前、何気なくフリューゲルモードになった時から突然のことなんだ、この抗いようのない恐怖が始まったのは」 「心当たりは?」 ハルと頭を振った。 分かりやすいことに、この飛行訓練の一番の近道は、ハルが得体の知れない恐怖心を克服してくれることだ。 でも、得体が知れない以上、どうやって克服すればいいのか見当もつかない。 空に慣れてもらおうと何度か飛んでもらっているけど、その方針は間違いだった。 好き嫌いの多い子供に知恵を絞ってピーマンを食べさせようとか、そんな話じゃない。 ハルの場合は、【飛行形態に対するアレルギー体質】といってもいい。 特訓を重ねれば重ねるだけ、いたずらにハルを苦しめるだけだった。 「このままでは、いつかあなたまで墜落に巻き込んでしまう。……いや、それは言い訳だな。怖いんだ、私は。階段の十三段目が開き、首にかかった縄が絞まる感覚に襲われて……」 恨めしそうにハルはスカートアーマーを見ている。 自分の装備に苦しめられることがどれだけ辛いかは、昔ストライカーに振り回されていた私だからよく分かる。 だからこそ、ハルには絶対、空を飛ぶ自由を知って欲しかった。 「私から言い出しておいて申し訳ないが、この特訓は――」 「特訓は続けるわよ。言ったでしょ、ちゃんと飛べるようになるまで容赦しないって」 言い方が悪かったからか、ハルの私を見る目がハートマン軍曹か何かを見ているような感じに変わった。 「あ、ううん、誤解しないで」怯える戦乙女を落ち着かせようと、ハルの頭を胸に抱いた。 サラサラのポニーテールが指の中に零れた。 どさくさに紛れて髪の香りをかいだ。 イッツ、フローラル。 「敵のいない空で怖がることなんてない。ハルの足を引っ張る恐怖は私が取り除いてあげる」 大袈裟に「恐怖を取り除く」なんて言ってみたけど、解決策はすごくシンプルで、要するにフリューゲルモードにさえならなければいいのだ。 ハルのアーマーはスカートにする時は腰に、翼にするときは背中に装備する。 ではスカートを大きく展開するように翼を作ってみてどうか? これが上手くいった。 腰の位置から翼を広げたハルは怯えることなく、空へと浮上することができた。 試してみた最初の頃は、 「見てくれホノカ! 飛んでいるぞ! なのに全く恐怖心がない!」 恐怖を克服できた代わりに頭のほうに重心が寄っているため、「飛んでいる」というよりは「腰が翼にぶら下がっている」という感じに見えた。 しかしこれでようやく、まともな飛行訓練を始められるようになったのだ。 私の言う【まともな飛行訓練】とは何か? そんなの決まっている。 誰にも邪魔されることのない広い空で、ハルとキャッキャウフフすることだ。 コツさえ掴んでしまえば早いもので、あっという間にハルは正しい姿勢での飛び方を習得してしまった。 まだフル装備で飛ぶまでには至っていないけど、今、私の横にくっついて真っ直ぐ進んでいるように、しっかりと翼で風を切っている。 「なあ、ホノカ」 前を向くばかりでなく、こうして私の方を向いて話しかけてくる余裕も出来た。 そのことが飛行の教官として嬉しくもあり、また寂しくもあった。 「何?」と、できるだけ寂しさを押し隠して応えた。 「今日は少し、遠くへ行ってみないか。いつもは城尊公園まで往復するだけだが、そろそろ行動範囲を広げてみたいんだ。神姫センターくらいまでは飛べるようになりたいんだが」 「神姫センター? ちょっと遠くない?」 「勿論、あなたが危ないと判断すればやめておく。無理して行こうとは思わないんだが、どうだろう」 「遠いのも心配事ではあるんだけど、それ以上に町中って空が狭いから公園より危ないのよね、他にも電線とかカラスとか……ま、その時は私が何とかすればいいか。ハルもいつも以上に警戒すること。いいわね」 「ああ、了解」 高い建物は神姫センターがある駅の周辺にしかないから、しばらくはいつも通りのフライトが続いた。 駅の方へ進むにつれて眼下では、だんだんと人通りが増えていく。 日に焼けて色褪せた貯水タンクを屋上に備えたアパートのように古びた建物の代わりに、一面をガラス張りにしたビルが土地を占めるようになっていく。 私達の真下を電車が通り過ぎた時だった。 「ヘイガールズ、絶好のフライト日和だな。君らも『大魔法少女』を見物に行くのか」 私とハル、その横に並ぶように【クレイドル】が飛んできた。 【クレイドル】が、である。 私の知り合いに【クレイドル】っていう名前の神姫や鳥やスーパーマンがいるわけじゃなくて、寝る時やネットダイブする時に寝転がるあの【揺りかご】だ。 側面に羽がついているとか、ヘリコプターのようなローターがついているとかじゃなく、【クレイドル】そのまんまの形で、まるで魔法の絨毯のように空を飛んでいる。 接続ケーブルを尻尾のようにぶら下げたまま。 絶句するハルがバランスを崩すのは予想できたため、舵を切り損ねる前に手をとってあげた。 どうして私がこんなに冷静でいられるのか? それは、クレイドルの上でくつろいでいる神姫が、ムカつくくらいニヤニヤしてるオールベルンだったからだ。 「あんた何やってんのよ!」 神姫センターまで溜め込んだセリフを吐き出すように、神様に詰め寄った。 ハルは神様が乗ってきたクレイドル(?)をまじまじと見ている。 「なんなのよあのクレイドルは! 意味が分からない! シュールにも程がある! あんたを見つけたとこに私がいて良かったわよ! もしハルが一人であんたと出くわしてたら間違いなく墜落してたわ! 神姫なら神姫らしく普通の武装で飛びなさいよ! なんでいちいち奇をてらうのよ! そんなに楽したいの!? 空でも寝そべりたいの!? だったら始めからよォ、あんたの家から出るんじゃあねェェェェ――――ッ!」 「はっはっは、今の最後のほうの言い方、ちょっとジョジョっぽかったな」 怒りにまかせた右ストレートを、神様は片手でパシンと受け止めた。 「おどかすつもりはなかったんだぜ。ただクレイドルから起き上がるのが面倒でね」 「もしかしてあんた、私達のことをつけて来たの?」 「人聞きの悪いことを言うなよ、偶然さ偶然。僕も君らも同じ場所へ向かっていたんだから、いくら広い空とはいえ偶然出会っても不思議はないだろ?」 「いけしゃあしゃあとよく言うわ。さっきあんた『大魔法少女』って言ったじゃない、何かあるんでしょ。まさか今から戦えってんじゃ……」 「二人は知り合いなのか」 クレイドルを調べ終わったハルが戻ってきて、話を打ち切らざるを得なかった。 私が七人の神姫を倒して願いを叶えること、次の相手が『大魔法少女』であること――他人に知られたら契約が無効になるという神様の言葉を信じるなら、できればハルには神様の存在を隠しておきたかったのに。 そうでなくても、こんな変人の知り合いがいるなんて、知られたくなかった。 せめて神様云々という妄言だけでも隠しておかないと、面倒なことになりそうだ。 「私はハルヴァヤという。いつもホノカには世話になっているんだ。ホノカ、そちらは?」 「あー……こいつはね、えっと」 「神様だ」 「おいコラァッ!」 「隠すことなんてないだろう、君らの上位の存在が堂々としていて何が悪い。ああ、ハルヴァヤ君だったか、いつもこの飛鳥に話を聞いているとも。今後とも贔屓に頼むよ」 「ははっ、なるほど神様か。ならばあのクレイドルも説明がつくな。少し調べたが、この神姫センターで買えるのと同じクレイドルだった。ホノカにはすごい知り合いがいるんだな」 ハルの懐が深くて助かった。 さすがに本物の神様とまでは信じていないんでしょうけど、変なことをやらかす神姫、くらいの認識が丁度いい。 「こんな奴と知り合ったって、何もいいことないわよ」 「そんなことはないさ、すばらしい知人がいることは本当に羨ましい……いや、本当だ。はあ……」 急に遠い目になったハル。 どうしたの、と聞こうとした時だった。 そいつは夕立のような唐突さでやって来た。 「お姉さまぁぁぁぁあああああああっ!!」 甲高い叫びが響いたと同時、ハルが後ろにスッと身を引いた。 ハルがいた場所を、神姫がものすごい勢いですっ飛んでいった。 「ぎゃんっ!?」と床に腹から落ちたのは、真っ赤なチャイナドレスに金の龍をあしらったマリーセレスだった。 神様を見たハルのように、今度は私が面食らう番だった。 ガバッと頭を上げたマリーセレスは、呆れ顔のハルを見るなり目を潤ませた。 「ひっ、ひどいですぅお姉様……せっかく久しぶりにお会いできたのにぃ、どうしてレイを避けるですぅ」 「人が見ている前で、よく恥ずかしげもなくそんな行動ができるな」 「ジャガイモやカボチャの目なんてぇ、気にするほうがおかしいですぅ。お姉様はレイの目だけを気にしてればいいで……スンスン。おかしいですぅ、お姉様以外からお姉様の香りがするですぅ」 自分のことをレイと呼ぶ神姫は突然、鼻をヒクヒクとさせながら辺りの臭いを嗅ぎまわった。 壁、床、神様、神様のクレイドル、そして私まで来たところでピタリと止まった。 目の前で止まった頭のお団子二つを、無性にもぎ取りたくなって手を伸ばした。 するといきなり手首を掴まれ、レイは犬のように私の手を嗅ぎまわった。 「お姉様の香りがするですぅ」 「はぁ?」 「このクソアマッ! ヘドがこびりついた汚ねェ手でお姉様に触れてんじゃあねェェッ!」 噛み付かれそうだったので慌てて手を引っ込めると、レイは踵を返してハルの元へ戻っていった。 いきなり現れてなんなのよコイツ、頭おかしいんじゃないの。 と、レイが自分のドレスの左肩口を掴み、袖を引き千切った。 「どこを汚されましてぇ、お姉様」などと言いつつハルの体を千切った袖で拭き始めたところを見るに、本当に頭がおかしいようだ。 丹念に腹部をこすられるハルは、無表情だった。 しかしその無表情の奥には、竦み上がってしまいそうな何かがあるように見えた。 「レイ、二度は言わない。ホノカに謝罪しろ」 今まで聞いたこともないハルの低い声に、しかしレイは聞く耳をもたなかった。 「はぁ……なんて美しい肢体ですのぉ。頬ずりしたいのにぃ、でもレイが触れるとこの美しさが損なわれる葛藤が――」 パン 軽い音がしてレイの頭が揺れ、私は目を疑った。 強くて優しくて気高いハルに、【ビンタ】という行為があまりに似つかわしくなかったからだ。 「私はな、レイ」手が体を拭いたまま固まるレイの両肩に、ハルが手をかけた。 「あなたを友人だと思っている。そしてホノカも友人で、二人が初対面であっても私達は仲間だ。だから仲間が仲間を侮辱する行為は良くないことだ。分かるかレイ、私は悲しいんだ」 ハルの言い方はまるで、小さな子供に物の善悪を教えているようだった。 マリーセレスがスモール素体ということもあって、よけいに大人と子供に見えてしまう。 「あなたが私に好意を持ってくれていることは嬉しいんだ。しかし――」 「知らんですぅ!」 突然レイの首がグリンとこちらを向き、大粒の涙を流しながら睨んできた。 それも束の間、ハルの手を振り払って、走って逃げてしまった。 「お姉様のあほたれェェェェ――――ッ!!」 という捨て台詞を残して。 それを黙って見届けたハルは、一度で数年は年をとりそうな大きさのため息をついた。 「あの、なんか、ごめんね?」 「ホノカが謝ることなんてない。私こそ、不愉快な思いをさせてしまって申し訳ない」 「でも一応、お友達、なんでしょ? なのにビンタなんて……」 「ああ、そのことか。気にするな」 これまたハルらしくもなく頭をポリポリとかきながら、再び大きなため息ひとつ。 「ぶったのは、これで六回目だ」 苦労人ハルヴァヤの意外な一面をまた見つけたというのに、得した気分にはなれなかった。 ◆――――◆ 「『清水研究室 第三デスク長』のギンや」 変なヤツというのは連鎖して登場したがるものらしく、神様、レイの次に現れたのは、私とハルが力を合わせて撃破した『13km』のギンだった。 この白衣を着た細目のラプティアスを見ることは二度とないだろうと思っていたのに、随分と早い再登場だ。 ただ、今回は私やハルの敵として現れたわけではなく、筐体の壁を挟んだ向こう側にいる。 ギンには、私達が観戦していることなんて知る由もないだろう。 障害物も高低差もないシンプルなステージに現れたギンは、以前戦った時と同様に大きなエネルギーボックスを側に置き、手には火炎放射器のようなビームソード『神殺槍』が握られている。 「ホンマはこないギャラリーがぎょうさんおる中でバトるのは勘弁してほしいとこなんやで。ボクの手の内がバレてしまうからや。それでもあえて出てきたんは自分、『大魔法少女』にボクんとこの研究室に何が何でも入ってもらうためや」 ギンの助手で黒いアーティル、イヅルの姿はどこにも見えない。 単身でバトルに臨むつもりのようだ。 見晴らしの良いステージではイヅルの索敵能力は不要なんだろうけど、このステージでのバトルはギンにとってかなり不本意に違いない。 ステージの端から端まで届くビームソード『神殺槍』はかなり強力だが、それ故に、バトルの相手、さらには多くのマスターや神姫の目に晒してしまっては、今日以降、何らかの専用対策を用意されてしまうはずだ。 これは強い神姫――特に神様の言う【特化型】であれば避けられないハンディキャップだ。 有名すぎるあまり、特性や攻略法が広く知れ渡ってしまう(私のような無名神姫に言わせれば、このハンディキャップはある意味で羨ましい限りだが)。 そしてギンは、戦う相手にさえ武装を見せずにバトルを終わらせるために、ほとんど非戦闘要員のイヅルを自分の【目】の代わりに連れて回るほど、そのことを恐れていた。 にもかかわらず、こうして観衆の視線の中に飛び込んできた。 この一戦のために――『大魔法少女』と戦うためだけに。 「でも自分をメンバーに引き込めるんやったら、ボクの秘密なんて安いもんや。せやから約束はキッチリ守ってもらうで、『大魔法少女』。ボクが勝ったその瞬間から、おたくは清水研究室第三デスクの一員や」 ギンがツイと指さした先、シュメッターリングは僅かも怯まず、むしろ全身に勇気が満ち溢れているようだった。 「分かってる。約束は守る」 「だめだよアリベ! これじゃ相手の思う壺だよ!」 肩に乗せた使い魔(マスコットマシン)をあやすように頭を撫でたアリベは、その時だけは表情を優しく緩め、まるで生まれたての赤ん坊を抱き上げる聖母のようだった。 身に纏う武装は、元々どう見ても武装とは呼べなかったシュメッターリングのコスチュームを、一昔前の小さな子供(+大きなお友達)向けアニメ調にアレンジされている。 短めのステッキで彼女の代名詞とも呼べる『インペリアルハート』は、見た目こそ星とハートのキラキラを散りばめた玩具だが、その中に秘められた力はこの神姫センターで販売されているどの武器をも軽く凌駕してしまう。 さらに使い魔の『ゲットセット』と合わせて『大魔法少女アリベ』が完成する。 いつ見ても一級の実力者とは思えない軽装備。 ちなみにあの使い魔、実はしゃべることができず、会話はすべてアリベの腹話術であるともっぱらの噂だ。 ちゃんとAIが入っているのかも不明の使い魔を落ち着かせ、再び顔を上げたアリベの瞳は、さっきまでよりもっと強く光り輝いていた。 「あなたが勝ったら、私はあなたの手下になります。だから私が勝ったら――」 「『もう二度とそのツラ見せるな』言うんやろ、嫌われモンは寂しいでホンマ」 「私が勝ったら、もうこの世界の人たちを苦しめないと約束してっ!」 「は?」と呆気にとられるギンを一人置き去りにして、『大魔法少女』の独壇場が始まった。 このバトルというステージを見るために詰め掛けたギャラリーが湧き上がり、熱狂的なファンクラブが声を揃えてアリベの名前を叫んだ。 アリベの背後に後光のような淡い緑色の線が走り、それが互いに絡み合って大きな円を描いていく。 複雑な模様はやがて歯車を何重にも組み合わせたような魔方陣となり、アリベのつま先を地から離した。 「この世界は綺麗なものばかりじゃない……つらいこと、苦しいこと、悲しいことがいっぱいある。立ち向かう強さがなくて、負けてしまうこともあるかもしれない……だけど!」 ブン、と『インペリアルハート』を振ることで魔方陣の輝きがさらに増し、光の中心にいるアリベの姿を上へ押し上げた。 予めアリベの情報収集くらいしていたであろうギンだが、実際に正面に立つのでは迫力が違うのか、口をポカンと開いて唖然としている。 ただ呆れているだけかもしれない。 「諦めずに戦い続けた先には必ず歩むべき道が待っているの! 晴れることのない雨なんてない! 明けることのない夜なんてない! 光が届かない闇なんてないっ!」 天使に手を引かれるようにゆっくりと上昇していく姿を近くで見ようと、集まった神姫やオーナー達が筐体のアリベ側へ押し寄せていく。 私とハル、神様は逆に空いているほう、ギンの側へと回った。 「だからみんな戦わなくちゃいけないの! 勇気を振り絞って、力の限りを尽くして戦わなくちゃいけない! でも全力で戦っても負けてしまいそうになったら――その人の手を取るために私はいるっ!」 すし詰めになった観客が「「「アリベー!!」」」と声を揃えて叫び、熱狂の渦を作り出す。 特に神姫にとってアリベは、正義を圧倒的な強さで証明してくれる偶像で、崇拝すべきアイドルと化している。 遠くから冷めた目で見ている私やハルには信じられないことだが、『大魔法少女』のオンステージの度に涙を流しながら彼女の名を声がかれるまで叫び続ける神姫までいるくらいだ。 「武装神姫にとって、強さこそが全てだ」 魔方陣の輝きに、ハルは目を細めた。 「その強さを正義の名の下で執行する――執行できる彼女を崇拝する気持ちは理解できるな」 そう言いつつも、バトル前の長い前置きはあまり好きではない様子がなんとも即物的なハルらしい。 華やかなステージの対岸ですっかり悪役かつ引き立て役になってしまった白衣のラプティアスは、『大魔法少女』を相手取れば必ずこうなってしまうと分かっていたのか、ただじっとバトルの開始を待つだけだった。 「ね。ギンとアリベ、どっちが勝つと思う?」 そう聞くと、ハルは難しそうに顎に手を当てた。 「ギンの神殺槍は知っての通りだからな。どんな相手だろうと優位は崩れない。さらにこうして観衆の下に出てきたのは恐らく初めてのはずだから、ギンのことを何も知らないアリベがあっけなく斬られて終わるかもしれない……しかし」 「しかし?」 「アリベの正義にあてられたわけではないが、『大魔法少女』が負ける姿が想像できないんだ」 私もハルと同意見だ。 たぶん、この神姫センターを利用する神姫のほとんども同じくらいの認識でいるだろう。 自分達の信じる正義の使者が負けるはずがない、と。 「ここまでナメられて黙っとくのも一苦労やけど、まあええわ。一瞬でぶった斬って、その自慢っ鼻をへし折ったろうやないか」 神殺槍を構えたギンはその言葉通り、速攻で勝負を決めるつもりだ。 ようやくアリベの長い前置きが終わり、バトルの始まりを告げるコールが響いた。 この時の私には知る由もないが、ここからギンの所属する『清水研究室』の噛ませ犬としての役割が始まるのだった。 『大魔法少女』-2/3 トップへ
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● 三毛猫観察日記 ● ◆ 第二話 「激闘!あおぞら商店街!」 ◆ 「ドキドキします…お二人の足手まといにならなければいいんですが」 「なに言ってるのよ小春ちゃん、今日は小春ちゃんが主役なんだからね!」 「そうですよ小春さん、大いに期待してますからね!」 どうも小春ちゃんって自信無さげなのよねぇ、あんなに強いのに。 「それでは今日の作戦を最終確認しましょう」お姉さん格のサンタ子ちゃんが言った。 7月22日、とうとう大会の当日です。アタシと小春ちゃんのデビュー戦だけど、一緒に トレーニングしてきた感じ、なかなかいいチームになったと思うの。 索敵・司令塔のサンタ子ちゃん。(ランカーなので自主的にハンデのウエイト装備) へヴィアタッカーの小春ちゃん。 そして小春ちゃんの盾/遊撃兵のアタシ。 このメンバーとコタローの特製装備なら、セカンドクラスでもいけると思うわ! 「・今日は6チーム総当りの5回戦で『市街戦』での模擬戦・リアルバトルです。 ・私が空から指示を出します。私が見ている映像は二人のバイザーに転送しますので、 敵との相対位置を測るのに役立ててください。 ・私に何かあったら指示はミアさんが出して下さい。どうやらミアさんの分析能力は 私達の中で…いえ、一般的に見てもトップレベルだと思うので、戦闘に慣れてきたら 司令塔を変ってもらうかもしれません。 ・作戦の基本は『小春さんを守る』です。状況によってはミアさんの遊撃もアリですが、 敵が二人以上残っている場合は、なるべく小春さんから離れないでください。 「ペイント弾でも気を抜くと怪我をしますから注意を。何か質問はありますか?」 「ありませ~ん!小春ちゃんはミアちゃんが絶対守るからね!」 「あ、あの…よろしくお願いします(モジモジ…はあと♪)」 一戦目、敵は悪魔型×2、天使型1。 一人で飛び出してきた天使型をサンタ子・小春の連携で瞬殺。その後サンタ子ちゃんが 残ったうちの一人を足止めして、もう一人をミア・小春の連携で瞬殺。で敵がギブアップ。 二戦目はもっと簡単。三人の騎士型を小春ちゃんが順番に撃破。アタシもサンタ子ちゃんも 傍で見ているだけでした。 三戦目は少し苦戦。編成がコッチと似ていたの。(天使型・騎士型・砲撃装備の悪魔型) でもそれはサスガにサンタ子ちゃん、サンタ子:騎士、小春:天使、アタシ:悪魔って 1対1同士に持ち込んで、被害無しで勝利。(あのままだと一人ぐらい被弾してたわね… やっぱり司令塔はサンタ子ちゃんでなくっちゃ!) 四戦目は不戦勝。対戦相手がケガをしちゃったみたい。アタシ達も気を付けないと… 休憩室のテーブルで一休みです。 「やったな小春、大活躍じゃないか!」 「あ、ありがとうございます♪」小暮ちゃんに誉められて、小春ちゃん嬉しそうね! 「よし、このまま無傷で優勝しちゃえ~!」 「はい、頑張ります♪」「そうですね!」「しちゃえ~!」 「こんにちは徳田さん。お元気そうですね」 突然、肩に天使型の神姫を乗せたスーツ姿の男が声を掛けてきたの。 「やぁ、久しぶり!…えーとゴメン、誰だったかな…」 「次の対戦相手の影田です。あぁ私自身は初対面ですよ。でも貴方の事は良く知ってます」 アキオちゃん、困った顔をしてます。本当に心当たりが無いみたいね… 「まだ解りませんか?あれ、今日は侍型の神姫は連れていないんですね。あぁそうか、 私達が破壊しちゃったんでしたっけねぇ」 突然アキオちゃんが、ものすごい形相でソイツに殴りかかった。 「キサマ『エスト』のメンバーかぁぁぁぁっ!!!」 「止せアキオ!!!」コタローがアキオちゃんを羽交い絞めして止めた。 ソイツ・影田は、ヤレヤレと呆れた仕草をした。 「あなた達のおかげで『エスト』は解散しました。しかし、まさかこんな所で報復の チャンスが来るとは思いませんでしたよ。 大会の運営部にはラストバトルだから実弾で盛り上げたいと話してあります。勿論、 挑戦を受けてくれますよね?」肩の天使型が、いやらしい笑いをした。 影田はどっかに行っちゃいました。 「な、何なんですかアイツは!?それに『エスト』って…訳が解りませんよ!」 小暮ちゃんと同じ、アタシもワケ解んない。 「…『エスト』と言うのはな、小暮君」とコタロー。 「『エスト』と言うのは、神姫を従えた20人ぐらいの不良チームだったんだ。 メンバーの中には強盗傷害裏バトルと、違法行為を行っていたヤツもいた。 そんな連中にアキオの昔の相棒、侍型「桜花」は破壊されたんだ」 「な…神姫を…先輩の神姫を破壊ですって!!??」 小暮ちゃんが、抱えていた小春ちゃんを思わず抱きしめた。 「…その敵討ちに、俺とアキオで主要メンバーを警察へ突き出したんだんだが… 今頃下っ端が出てくるとは…」 「…………サンタ子、準備はいいか?」 長い沈黙の後、アキオちゃんが口を開きました。 「待てよ、今更あんなヤツと実弾バトルなんて、何の意味があるんだ!」 「止めないで下さい、虎太郎さん」サンタ子ちゃんが割って入る。 「あの人達だけは許せないんです、何と言われようと。私一人だろうと戦いますよ!!」 「なに言ってるのサンタ子ちゃん、ミアちゃんもモチロン戦うよ!」 「私も戦います…あんな人、許せないです…!」 コタローが、みんなの顔を一人ずつ見つめてから言った。 「…………解った。ミア、みんなを守ってやるんだぞ…」 「アイアイサー!ミアちゃん頑張るよ!!」 商店街の中央に作られた試合会場は、いままでのどの試合の時よりも騒然としてる。 これが最後の試合だし、急遽実弾バトルになった事も影響してるのね。 サンタ子ちゃんはウエイトを外し、代わりに愛用の野太刀「花鳥風月」を装備してる。 空中高速接近戦が本来の戦闘スタイルなのです。 小春ちゃんはペイント弾を実弾にして、アタシはウレタン製の猫武器を本来のに戻す。 対して影田チーム。マスターは影田一人、天使型+砲台型×2のチーム。 砲台型は普通の装備に見えるけど…天使型の持ってるレーザーライフルがちょっと変。 ジョイント用の穴だらけだし、なんか大きくない? 「大変お待たせいたしました。それでは『あおぞら商店街杯・武装神姫チームバトル大会』 のファイナルバトルを開始します!レディ~~~ゴー!!」 「作戦は今まで通り、まず私が斥候に出ます」サンタ子ちゃんが飛び出した。 アタシと小春ちゃんは、サンタ子ちゃんから送られてくる映像をたよりに前進する。 「敵は動いていません、三人固まって広場の奥に引っ込んでるわ。敵の戦力を考えると 今回は小春さんに弾幕を張ってもらって、私とミアさんで順番に一撃離脱がいいかも しれません」 パーフェクトな作戦だと思うけど、何か、何かイヤな予感がするのよね… アタシと小春ちゃんは射程距離ギリギリのところまで移動してきた。これ以上近づくと 敵の射程距離にも入っちゃう。 ここからなら肉眼でも敵の三人を確認できる。ホントに動いてないわねぇ。まるで三人が 一つの砲台みたいに見える。 ハッ!!!! 「小春ちゃんサンタ子ちゃん、スグに離脱して!!!!!!!!」 私達が撤退を始めた直後、大砲が発射された。 それは、LC3レーザーライフルの射線じゃなかった。二人の砲台型から取り外した パーツを取り付け、残った裸の素体をパワーパックとして接続したソレは、レーザー バズーカと言った方がシックリくる。 直撃を予想したアタシは小春ちゃんを蹴り飛ばし(「小春ちゃんゴメン!」)その反動で 自分も回避行動をとる。 「小春ちゃん!!!」 「大丈夫、手をかすっただけです。ミアちゃんが助けてくれなかったら、私、多分 破壊されてました…」 小春ちゃんの左手が鈍く変色している。強がっているけど、かなり辛いはずだわ。 「二人とも大丈夫ですか!!?」サンタ子ちゃんが空から降りてきた。 「とりあえず命は無事だよ。でも、あの武器が…」 こちらより射線が長く、強力な武器。それは攻略しようとするだけで、多大な犠牲を 覚悟しなくちゃいけないってこと。 「…ミア、それからみんな、ギブアップするぞ」コタローから通信が入った。 「アレが動き出したら、それこそ最後だ。ミア、お前なら予想できるだろう?」 「そんな、虎太郎さん。まだやれます!私が囮になって」 「サンタ子、バカを言うな!確かにヤツは許せないが、お前達が犠牲になる必要は無い! それでいいな?アキオ、小暮」「……………あぁ…」「はい…」 「でも、小春さんだってこんな怪我を…桜花さん……うっううっっ」 フィールドの向こうでは、影田がニヤニヤしている。 沈黙。みんな気持ちは同じだけど、悔しいけど、どうする事も出来ない… アタシ以外は。 「コタロー、1分だけ時間をちょうだい。ミアがあのバズーカを破壊する!」 「え?あ、ミア!?何を…無茶だ、いくらお前でもあの距離、狙い撃ちされるぞ!」 「コタローお願い…ミアを信じて!」 「だが……」 『信じて!』 「…………………解った。だが、無理はするなよ…」 「ありがとう、コタロー」 ネットにダイブしてる時に、武装神姫と似た設定のマンガを見つけたの。その中で、 自分にダメージを与えることによって緊急回路を発動させ、ハイパー化するというのが あった。神姫でも同じ事が出来ないかな…というのが発端。 出来るのよ。危険だしコントロールが難しいけど。こっそり訓練だってしたし。 体の各動力部を慎重に臨界まで上げていき、擬似ダメージを蓄積させる。制御を失敗して しまえば、本当に爆発しちゃうかもしれない。 バズーカが動き出した。速度は早足程度だけど、確実にこちらに近づいてくる。 「二人とも、アレの後ろに周りこんでちょうだい!」「了解です」「え、あ、はい!」 この移動速度ならギリギリ射程距離に入った直後に発動できる。 案の定、発動準備が整った瞬間にバズーカの発射準備を始めた。もう遅いわよ! 「―――――――――バーストモード、いっくよぉ~!」 次の瞬間、アタシの体を真紅の光が包み込む。この警報シグナルが点いてる1分間が勝負。 突然のアタシの変化に驚いたのか、敵はあわててバズーカを発射する。 狙いが甘い!一旦左によけて、そのままバズーカ目指してダッシュする。 二撃目は見当違いな所へ発射。スピードアップしたアタシに全然対応できていない。 天使型の表情が見えた。なにか化物でも見るような顔をしている。ある意味化物かも しれないわね。今のアタシなら熊だって倒せるハズ。 三、四撃目を楽々かわし、天使型の目と鼻の先に到達。 2体の裸の素体はバズーカにケーブルで連結されて、無表情に立っている。ホントに パワー供給装置として使われているみたい。 天使型は…大きく目を見開いて、恐怖のあまり顔が引きつってる。 「後悔したって、もう遅いんだからね!!」 頭の中でEXゲージがピカピカ点滅してる感じ。時間が無いし、決めるわよ! 「超必殺……… 猫 ・ 乱 ・ 踊 !!! 」 アッパーフックアッパー手刀フックストレートフック肘肘アッパー裏拳フックアッパー 掌打フックアッパービンタビンタ肘肘肘アッパーフック膝膝膝膝フックアッパー 前蹴り回し蹴り回し蹴り踵落としトドメのサマーソルト!!! 一瞬でボロ雑巾のようになってしまった天使型は、最後のサマーソルトの勢いですっ飛んで いった。少しやり過ぎたちゃったかな? サンタ子ちゃんが来た。この急な展開にもちゃんと対応してる。流石です。 小春ちゃんは遠くで武器を構えてるけど、ビックリして固まっちゃってます。 「ミアさん、大丈夫ですか!?」 「サンタ子ちゃん…後はまかせちゃうね…」 警報シグナルの光が消えて、同時にアタシの意識も消えていきました。 その日の夜、やっとアタシは目を覚ましました。 結局大会はそのまま終了しちゃったそうです。残った2体の素体は天使型が倒された瞬間に 起動停止したそうで…ホントにパワーユニットとしてのみ使われてたのね。 影田は試合終了直後に姿を消しちゃったそうです。 それから。 バーストモードのせいでアタシのボディはボロボロになってたの。特に関節系の部品の 磨耗が激しく、修理には相当の手間がかかるんだって。 (虎太郎「手間なんていいんだ。それより俺は無理するなって言ったハズだぞ?」) 簡易素体に入れられたアタシは、もう1時間以上コタローからお説教されてます。 まぁコタローに心配掛けるのも何だし、当分の間は大人しくしてよっと。 当分の間は、ね! 第三話 意思を継ぐ者 へ進む 第一話 猫、飼いました へ戻る 三毛猫観察日記 トップページへ戻る
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ウサギのナミダ・番外編 少女と神姫と初恋と その3 ◆ 翌朝。 昇降口で上履きに履き替えようとしたところで、呼び止められた。 「おはよう、八重樫!」 「あ……おはよう、安藤くん」 今日は普通に笑えているだろうか。 そんなことばかり気になってしまう美緒である。 昨日の今日で、安藤とはずいぶん距離が縮まった、ような気がする。 ほら、今も彼の顔がすぐ間近に…… 「……って、うわぁ!」 安藤の端正な顔がすぐ隣にあって、思わず飛び退いてしまった。 だが、安藤はいたって普段通りの様子で、不思議そうにこちらを見ている。 「どうかした?」 「え、えと……なんでも、ない……」 「そっか。昨日はありがとな。助かったよ」 「そんな……大したことしてないし」 「それでさ、よかったら今日の昼休みも付き合ってくれないか? 聞きたいことが山ほどあってさ」 「うん……」 当然、美緒に断ることができようはずもない。断る理由もない。 美緒が小さく頷くと、安藤はさわやかな笑みを浮かべた。 「じゃあ、昨日と同じ、屋上で。よろしくな!」 「うん」 安藤は颯爽と朝の廊下を歩いていく。 その背中が、なんだか美緒にはまぶしく感じられた。 美緒はしばらくその場に立ち尽くしてしまっていた。 頭がぼーっとしている。 これは何という夢の続きなのだろうか……。 「みーお」 そんな美緒を一瞬にして現実に引き戻したのは、背後から聞こえてきたハスキーな呼び声だった。 声に聞き覚えはありすぎる。 美緒はものすごい勢いで振り向く。 はたして、そこには、彼女の親友である三人、有紀、涼子、梨々香の姿があった。 三人とも、なんとも言えない笑みを口元に浮かべつつ、目を細めながら、なまあたたかーい視線で美緒を見つめていた。 「あ、あ、あなたたちっ……!?」 「ほほーう、昨日一日でずいぶん進展したようですなぁ、涼子さん」 「そうですねぇ。ゲーセンで待ちぼうけしていたかいもあった、というものでしょうか、梨々香さん?」 「もう、いやですわねぇ、お二人とも。それを口にすることこそ野暮と言うものですわよ?」 美緒は背中にいやな汗が流れていくのを感じた。 三人は、昨日美緒がゲーセンに顔を出さなかったことを怒っているのだろうか? いや、そうではない。 これはもっとたちの悪い何か。 そう、三人は面白がっているのだ。 だから、美緒は弁解する言葉さえ失ってしまう。 美緒がムキになって言葉を重ねるほど、泥沼に陥ってしまうだろう。 この親友たちは、たちが悪いことでは折り紙付きだ。 「なに落ち込んでるんだよ、美緒。あたしたちはアンタの味方だよ?」 「そうそう。あなたを応援してるわ。リーダーの美緒には、幸せになって欲しいから」 「大丈夫。わたしたちに任せて。安藤くんとうまくいくように、三人で全力でフォローするからね!」 激励が猛烈な不安と化して、重く肩にのしかかってくるのはなぜだろう。 美緒は重たいため息を一つついた。 そして、親友たちに教室まで連行された。 有紀たち三人が、朝から美緒を囲んだのは、何もからかうためだけではない。 学年女子のアイドル的存在の安藤には、過激派的な自称恋人候補が、少数ではあるが存在する。 朝の昇降口での、美緒と安藤の親密さを見れば、過激派が美緒を女子トイレあたりに拉致する危険性は確実にある。 そこで三人は先回りして、高校の最寄り駅から、登校中の美緒を尾行していたのだ。 四人揃っていれば、過激派たちもおいそれとは手が出せないはずだ。 面白がってからかってはいても、やはり美緒は彼女たちのリーダーであり、大事な親友であった。 ◆ 安藤を狙う女子連にとって、八重樫美緒はもはや最重要人物になっていた。 彼女たちは早朝より、情報収集と共有を行っていた。 そして、昨日の放課後に安藤と美緒の間になんらかの事象があり、二人の仲が深まったと結論づけられた。 今朝の安藤と美緒のランデブーとその会話の内容についても、朝のホームルームまでには情報共有が済まされていた。 一部の過激派が、八重樫拉致に動きかけたが、八重樫美緒には私設の護衛が張り付いており、強襲作戦は失敗に終わっている。 その結果を受け、女子連は休戦協定を無期延長。共通の仮想敵である八重樫美緒の動向を探り、可能であればこれ以上の侵攻阻止のために、団結することとなった。 情報によれば、ターゲット・八重樫は、今日もまた安藤と、屋上で昼食を共にするようだ。 昨日は会話が直接聞き取れなかったことが情報不足を招き、その後の対策が行えずじまいだった。 だが、今日の女子連の動きは迅速かつ的確だった。 昨日と同じ轍は踏まない。 二人が落ち合う屋上のベンチを同じ場所に想定、盗聴器を仕掛ける。 そして、安藤と美緒がそのベンチに座るように仕向けるため、手を打った。 ある者は友達と誘い合って屋上で昼食を取る。 ある者は部活の先輩に依頼して、カップルで屋上での昼食をするように仕向ける。 ある者は賄賂(パックの飲み物人数分)をクラスの男子生徒のグループに渡し、屋上での昼ご飯を依頼した。 いつの間にか設置されていた美緒のクラスの作戦本部には、屋上の見取り図が用意され、次々と空きのベンチが塗りつぶされてゆく。 そして午前の授業終了前に、作戦の準備が整った。 もちろん、安藤と美緒の二人は、そんなことを知る由もない。 ◆ 「おーい、八重樫、こっち!」 昨日と同じように五分後に教室を出て、昨日と同じように安藤がベンチから手を振っていて、昨日と同じようにジュースのパックを彼からもらった。 今座っているベンチも、昨日と同じだ。 今日も快晴。 屋上で昼食を取るには気持ちのいい日和である。 安藤と一緒にいることにも慣れてきたのか、昨日よりは幾分緊張しないですんでいる美緒だった。 今日も安藤は焼きそばパンをかじっている。 美緒はいつもどおり手作り弁当だ。 談笑しながらの昼食は、昨日よりも楽しく感じられた。 こんな昼食が毎日続けばいいのに、と思うのは贅沢だろうか。 いつも昼時を共にしていた三人の親友に、美緒は心の中で手を合わせて謝った。 ◆ その三人は、やはり昨日と同じ階段ホールの陰から、美緒たち二人を見守っている。 もちろん、周りには、クラスメイトの女子たちが陣取っていた。 有紀は小型のワイヤレスヘッドセットに耳を傾ける。 携帯端末の電波の受信域をあわせ、盗聴器からの音声を拾い、聞いているのだ。 感度は良好。 その場にいる誰もが、二人の会話を盗み聞いていた。 涼子が小さく呟く。 「スパイ大作戦も真っ青ね」 「なんだそりゃ?」 「古い海外ドラマ」 有紀は、涼子の意味不明の呟きに首を傾げたが、すぐに忘れてしまう。 今は二人の動向の方が重要だ。 有紀はヘッドセットに注意を傾けながらも、視線をベンチの方へと送った。 ◆ 「……それで、今日の相談は?」 美緒が水を向けると、パックを置いた安藤が、待ってましたとばかりに、傍らに置いた包みを取り上げた。 どこかの書店の紙袋のようである。 「昨日の帰りに、本屋に寄って、神姫関係の雑誌を買ってきたんだ」 「へえ」 「それで、書いてあることで分からないことが多くてさ……」 えてして、専門の雑誌というものは、初心者の読者に優しくない。 情報の鮮度を優先し、専門用語や知識を解説することはないからだ。 さもありなん、と美緒は頷いた。 「それで、帰ってから姉貴に思い切って雑誌見せてみたんだ」 安藤が取り出した雑誌は二冊。 今表紙が見えているのは、週刊バトルロンド・ダイジェストの最新号である。 「お姉さん?」 「そう。そしたら、この雑誌のバックナンバー押しつけられてさ。 『読め、そして泣け!』とか言って、わけわかんねー。 雑誌記事で泣くとか、なんだそりゃって感じだよな」 そして安藤は、そのバックナンバーを最新号の下から取り出す。 その表紙を見て。 美緒は今度こそイチゴミルクを吹き出した。 ◆ 「ああ、もう美緒ちゃんったら……ジュースを吹いたりしたら、台無しじゃない。ここまで上げてきた好感度が急降下よ、もう」 一部始終を見ていた梨々香の感想である。 梨々香たちがいる階段ホール裏からでは、くだんの雑誌の表紙は見えない。 「いったい、何の表紙だったのかしら……」 涼子が呟く視界の中で、美緒が猛烈にむせていた。 すると、隣にいる安藤が、美緒の背中に手を当てた。 周りにいる女子連中の、息を飲む気配。 有紀は小さくガッツポーズした。 ◆ 「ごほっ、ごほっ、えほっ」 「大丈夫か、八重樫」 さすがにみっともなくて、美緒は泣きたい気分だった。 でも、背中をさすってくれる安藤の手は優しい。 しばらくして、呼吸も元に戻ってくる。 もう大丈夫、と言って、安藤からバトルロンド・ダイジェストのバックナンバーを受け取った。 表紙に写る二人の神姫。 美緒はそのうちの一人を撫でるように、そっと指で触れた。 感慨は深い。 表紙の写真は、『ハイスピードバニー』ティアと『アーンヴァル・クイーン』雪華が抱き合っている様子だ。 「八重樫は、この神姫たちを知っているのか?」 「うん……よく知ってる」 この場面に、美緒は立ち会っていた。 神姫マスターとして、決して忘れられない大切な出来事だった。 「この二人は、わたしとパティが一番尊敬する神姫なの。 この時の出来事は、よく知ってるわ。この前のことも、その後のことも……」 「八重樫……泣いてる?」 「え……?」 いつの間にか、美緒の瞳から頬に涙の筋が通っていた。 「や、やだ……ごめんね……泣くつもりなんて……」 美緒はあわてて目をこする。 無意識のうちに涙がこぼれた。 美緒の中には、あの事件に対し、関わることができたことへの誇らしさと、自責の念がある。 表紙のティアを見て、そんな複雑な感情が溢れてきたのだった。 「その泣いてる方の神姫さ……姉貴が大ファンらしいんだよ」 「え、そうなの?」 「やっぱ、ウサギだからなのかな……ああ見えてウサギ好きでさー」 「へえ……」 「もしよかったら、この神姫のこと、教えてくれないか? 姉貴にも教えてやりたいし……オレも聞きたい」 安藤に見つめられて、美緒は胸に手を当てる。 大丈夫、感情の揺れはもう収まっている。 新たに神姫のマスターになった安藤には、是非聞いてもらいたい。 「うん。話すね。この神姫……ティアのこと、そのマスターのこと。 二人は……神姫とマスターの関係になるために、すべてを賭けて戦って……運命さえ覆したの」 「……大げさだなあ」 肩をすくめて笑った安藤に、美緒はただ微笑みを返した。 ◆ 美緒は語り上手だった。 彼女の記憶は再構成され、一つの物語として語られる。 その物語の内容については、拙作「ウサギのナミダ」を参照されたい。 彼女の口調はよどみなく、その柔らかな声に誘われ、物語世界に引き込まれていく。 安藤も聞き上手だった。 相づちを打ちながら、彼女の語りを止めないようなタイミングで質問したりする。 それは聴衆の多数が疑問に思ったことで、説明が補足されて、さらに物語は鮮明になるのだった。 いつしか、盗聴器に傾注していた女子連のほとんどが、美緒の語りに引き込まれていた。 「その男の出現に、ティアは動揺したと思う。 ティアの過去を知る……いいえ、ティアにずっとひどいことをし続けた人物だったから。 きっと、怖くて怖くて、仕方がなかったはず。 だけど、彼女は一人じゃなかった。 ティアのマスターは、その男に敢然と立ち向かったわ。 『ティアは決して渡さない』って言い切った。 ティアの過去をばらされても……ティアは自分の神姫だって主張し続けた。 彼にとってはもう、ティアはとても大切な存在になっていたの。 だけど……その後、とんでもないことが起こった。 その醜い男のせいで、二人は絶望の淵に追い込まれることになったのよ……」 安藤がごくり、とのどを鳴らす。 と、そのとき。 全校にチャイムの音が響きわたった。 午後の授業五分前の予鈴だ。 美緒は小さく吐息をつく。 「あ……途中だけど、そろそろ教室に戻らなくちゃ」 「そうだな……」 安藤と美緒はベンチから立ち上がった。 「なあ、八重樫」 「はい?」 「……今の話の続き、また明日にでも聞かせてくれないか」 「え?」 「だって、まだこの雪華とかいう神姫が出てきてないじゃんか。続きも気になるし」 「うん……いいよ」 「それじゃあ、また明日昼はここで!」 「うん」 美緒は頷きながら、ようやく心からの笑みを安藤に向けることができた。 ◆ 階段ホール裏では、女子連中が全員ずっこけていた。 「な、なんちゅーとこで話切るのよ、あの子!」 「美緒……恐ろしい子!」 あのゲーセンに通い詰めてでもいない限り、知る人ぞ知る話だ。 女子連の誰も、ティアの話を知らない。 続きがとても気になる。 しかし、その話の続きを聞くには、明日、また安藤と昼食を共にすることを容認しなくてはならなかった。 その場にいた、美緒の親友たちに話の続きを尋ねたが、三人ともニヨニヨと薄気味悪い微笑を浮かべるばかりだった。 美緒本人に話の続きを語らせるという手もあったが、しかしそれでは、安藤との会話を盗聴したことがばれてしまう。 彼女たちに選択肢はなかった。 美緒と安藤の逢い引きを監視するという名目で、美緒の語りを聞くほかには。 こうして、美緒がティアの物語を話し続ける限り、女子連は美緒に手出しできなくなったのだった。 ◆ 高い空に、終業の鐘が鳴り響く。 「おーい、やえが」 「あーおわったおわった美緒今日はゲーセン行くか?いくよなよーしそれじゃあ今日は存分に対戦だレッツゴー!」 し、と安藤が言い終えるよりも早く、有紀は美緒を抱えて、風のように教室を去った。 その後を、自分と美緒の分の荷物を抱えた梨々香が、これまた風のように教室を出て行く。 声をかけようとしていた安藤は、その場で硬直してしまっていた。 「残念だったわね、安藤」 固まっている彼に声をかけたのは、旧知の女子・蓼科涼子である。 二人が小学校からの知り合いで、お互いに気がないのは周知の事実だ。 だから、うるさい女子連も、涼子が話しかけるときは、全く警戒していない。 「蓼科……なんなんだ、園田のヤツ」 「あなたが美緒を独り占めしてるから、嫉妬して拉致したのよ」 安藤は思わず目を見開いていた。あの蓼科涼子が冗談を言っている。 「美緒に用があるなら、あとでT駅前のゲームセンター『ノーザンクロス』に来て」 「え?」 「あなたの神姫を連れてきなさい。武装も持ってね。美緒もわたしたちもそこにいるから」 「……なんで?」 煮え切らない安藤に、涼子は眉根を寄せた。 「安藤はバトルロンドがしたいんじゃないの? そうじゃなきゃフルセットの神姫なんか買わないでしょう」 フルセットの武装神姫とライトアーマーでは、マニュアルの大きさ、厚さが違う。 昨日の昼休み、安藤が持ってきたマニュアルは、明らかにフルセットのものだった。 「まあ……そう、だけどさ……」 「だったら、つべこべ言わずに来るといいわ。バトロンのことも神姫のことも教えて上げる。……主に美緒が」 最後の言葉だけ安藤に聞こえるように言って、涼子は踵を返した。 安藤は首を傾げつつ、彼女の背を見送った。 ◆ 「ちょ、ちょっと有紀……! いったい何なのよ!?」 美緒は自分を小脇に抱える親友に抗議する。 有紀は校門を出たところでようやく美緒を降ろした。 下校する生徒たちの視線が痛い。 「おー、わりいわりい」 有紀は悪びれる様子もない。 後ろから、梨々香がとてとてと付いてきた。 「はい、美緒ちゃん」 渡された荷物を仏頂面で受け取る。 いったいなんなのか。 親友二人の顔を睨むが、二人ともなま暖かいまなざしでニヨニヨと微笑するばかりで、何を考えているのかさっぱり分からない。 「まあ、そう睨むなよ。悪いようにはならないからさ」 「そうそう。とりあえず、ゲーセンいこ? そこで待ってれば分かるから」 親友たちの言葉に、不安が増大するのはなぜだろう。 ここに涼子がいないのも気にかかる。 まさか安藤くんに何かあることないこと吹き込んでいるのではあるまいか。 しかし、結局美緒は為すすべもなく、有紀と梨々香に連行された。 ゲームセンターに着くまでの道のり、女同士の友情について、ひたすら考えていた。 ◆ T駅前のゲームセンター『ノーザンクロス』は、安藤も知っている店だ。 何度か友人たちと遊びに行ったこともある。 バトルロンドが盛んで、美緒たち四人が入り浸っていることも知っていた。 だが、一人で入るのは初めてだった。 しかも神姫連れである。 少しばかり戸惑って、足を進めるのに躊躇するのも致し方のないところであろう。 安藤は、アルトレーネのパッケージを入れたスポーツバッグを手に、ゲーセンの前で立ち尽くしている。 だが、そうしていても意味はない。 意を決し、安藤はゲームセンターの自動ドアをくぐった。 扉が開き、独特の喧噪に包まれる。 入り口に配置されたプライズマシンやプリクラ機の筐体の陰から、大型ディスプレイの映像が見える。 武装神姫同士のバトル。 彼が目指すコーナーは一番奥にある。 安藤は緊張した面もちのまま、歩を進めていく。 バトルロンドのコーナーは予想以上に盛況だった。 対戦台はすべて埋まっている。 神姫連れで気後れしていた安藤であったが、そんな必要はどこにもないことがわかる。 このコーナーにいる客は皆、堂々と神姫を連れているからだ。 安藤はあたりをきょろきょろと見回した。 探す人物とその仲間たちはすぐに見つかった。 八重樫美緒と仲間たち。 彼女たちはバトルロンドコーナーの壁際に陣取って、何事か話している。 四人の視線は、すでにこちらを向いていた。 安藤は四人の方へと歩いていく。 「言われたとおり、来たぞ」 少し棘のある口調も仕方のないところだ。 充分な説明もされずに呼び出された上に、美緒以外の三人はなにやら不気味な微笑を浮かべている。 何か企んでいることは確実だ。 「ノーザンにようこそ」 真顔に戻って涼子が言う。 このゲームセンター『ノーザンクロス』は、客からノーザンと略される。 安藤は涼子と視線を合わせた。 「いったい何なんだ。確かにバトルロンドやるつもりではいたけど、何を企んで……」 「ばかね。あのまま学校であなたと美緒が話し続けてたら、それこそ学校中の噂になってるわよ。だからゲーセンに来てもらったの。ここでなら、クラスメイトの横やりも入らないでしょう」 「う……」 確かに、涼子の言うことは一理ある。 バトルロンドをプレイしにゲーセンに来ていることにすれば、美緒たちと話していても何の問題もないし、よけいな横やりも入らない。 「おまえらもバトルロンドをやるのか」 「ったりめーよ! あたしたちはここじゃ『LAシスターズ』で通ってるんだぜ?」 有紀は安藤に胸を張って見せた。 確かに、美緒たち四人は最近、『LAシスターズ』あるいは『シスターズ』と呼ばれている。 LAはライトアーマーの略だ。 ライトアーマー神姫を操る四人組の少女たちは、もともと目立つ存在だった。 最近は陸戦トリオと一緒にいることでさらに注目を集めているし、めきめきと実力を上げてきていて、一目置かれるようになってきている。 それで、いつの間にか誰かが、LAシスターズと呼ぶようになっていたのだった。 「そうか、それなら教えてくれよ、バトルロンド」 「いいとも。マンツーマンで教えてやるよ。……講師は美緒で」 「え……ええぇっ!?」 有紀の言葉に泡を食ったのは、美緒本人だった。 「あ、あの、な、なんでわたし!?」 「えー? だって、あたしたちん中じゃ、パティが一番強いしー」 「わたしの涼姫はオリジナル装備だから邪道だしー」 「ここはやっぱり、リーダーの美緒ちゃんの出番でしょ!」 もっともらしい解答を並べた有紀、涼子、梨々香は、一様になまあたたかーい視線で美緒を見ていた。 楽しんでる……絶対楽しんでる。 もはや女同士の友情を疑わざるを得ない美緒だった。 それでも、 「それじゃ……引き続きよろしくな、八重樫」 と安藤くんが笑顔で言ってくれたから。 美緒は頷いてしまうのだった。 ◆ それが火曜日の話で、それから毎日、安藤はノーザンクロスにやってきて、バトルロンドをプレイした。 安藤は最初から目立っていた。 彼の神姫・オルフェが、今話題のアルトレーネ・タイプだったこともある。 彼につきっきりでレクチャーしているのは、LAシスターズの面々だ。 実はシスターズは、このゲーセンでは密かに人気を集めている。美少女ぞろいなのだから、それも当然というものだろう。 ノーザンクロスの常連たちが、そんな安藤を放っておくはずもなかった。 新しいプレイヤーと知って、好意的に話しかけてくる常連もいた。 目立っている彼の鼻っ柱を折ってやろうと、強気に挑んでくるプレイヤーもいた。 しかし、いずれのプレイヤーたちとも、対戦後には仲良くなっている。 安藤は人がよく、謙虚な姿勢で、むしろ彼の方から教えて欲しいと頼んでくる。 彼の謙虚さと向上心溢れる姿勢に、常連たちは皆好感を持ち、すぐに打ち解けた。 こうして、週末前の金曜日には、安藤はすっかりノーザンクロスの常連たちの仲間に入っていた。 彼とシスターズを中心に、和やかな笑い声が聞こえてくる。 しかし、それを快く思わない者もいた。 「チッ……安藤のヤツ……ゲーセンでも調子に乗りやがって……」 そう呟いた少年の名は、蜂須英夫。 ノーザンクロスにおける『三強』の一人で、『玉虫色のエスパディア』の異名を取る神姫マスターである。 続く> Topに戻る>
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左腕と左脚、左の乳房のみを「サイフォス」ベースの装甲で覆った姿でエルギールはヴァーチャルスペースに現れた 金管楽器の様な凄まじく派手な銀色の装甲は、今回のフィールドである湖畔の風景を見事に天地逆さまに写している 『随分軽装だな?まぁホントの白兵戦になりゃぁ神姫用の武器は「避けられない」方がヤバいって言うし、ある意味ありっちゃありか?でも所詮そんだけだろ?ビシッとキメてやろうぜ!華墨』 (確かに軽装だ・・・が・・・・) 武士の台詞を華墨は半分聞き流している ここ数回のバトルで、華墨は少しずつではあるが自らのデフォルト武装の取捨選択を始めていた 初戦の教訓と「どうせ相手に密着するのだから」という事で、十字戟もメインボードから外し、主力武装は腰の大小に、やや肩周りの可動を阻害する肩当を捨て、ジョイントを介して「垂れ」の部分だけを直接装備、鬼面と喉当ても外していた 最後の二つは今回のバトルに際して急遽実行したのだが、それというのもポッドに入る前にちらりと、エルギールの主力武装とおぼしきものを目にしたからだ それは剣呑な黒い刀身に、禍々しい朱い模様がうねうねと描かれた、非常に大振りなダガーだった(殆どショートソードと言っても良かったかも知れない) 神姫が外出する時に、手持ちの得物の中から携行に便利な物を選んで持ち歩くというのは聞いた事があるが、華墨には何故だか判らないがそれが「護身用の武器では無い」という強迫観念めいた確信があった それで、視界と装甲の二択に(勝手に)迫られて、結果折衷案で、「兜は残して仮面は外す」という結論に至った訳だ いずれにしても、未だに胸の奥をざわざわと撫でられる様な感覚はおさまらず、目の前の軽装な姿を、武士程楽観視出来無いのだった 第伍幕 「Merciless Cult」 自分と相手の戦力差がどの程度なのか?正確に把握するには結局ぶつかってみるのが一番良い。華墨は覚悟を決めた ざくざくいう足音と共に、バーチャルの下生えが踏み潰されてゆく。(いける、いつもの私だ)ポニーテールを地面に水平になるくらい迄浮かせながら華墨は走る。右手で太刀を抜き放ち、気合一閃、一気にエルギールに斬りかかる! 白刃が虚空に白い影を描き、華墨の天地は逆転する。遅れて知覚される苦痛 「ハン!速さと装甲にモノ言わせて真っ直ぐ突っ込んで殴るだけの、単なるゴリ押しじゃない!?案の定大した事無いわね?」 (なんだ!?何をされたんだ?今!?) 地面を抉る程に叩き付けられた華墨だったが、即座に立ち上がり、エルギールから距離をとる 「どうしたの?躓きでもしたのかしら?ホント情っさけ無いわね」 憎まれ口を叩くエルギール。その手に武器らしきものは握られていない。華墨が警戒していた短剣も、まだヒップホルスターの中だ 「・・・」 「つば」を鳴らして太刀を構え直す。いつもの様に、加速をつける為の攻撃型ではなく、切っ先を相手に向けた防御よりの型だ 「・・・アタシってそんな気が長い方じゃ無いのよね・・・来ないんなら」 ヒップホルスターから短剣を抜き放つエルギール。一瞬、朱色の模様が生物の様にうねった・・・様に感じた 「こっちからブン投げてやるまでよォ!!」 「!!」 明らかに短剣が届く間合いではなかった、が、エルギールの剣は鋼線で接続されたいくつかの節に別れ、異様な動きでもって華墨の左腕に巻き付いたのだ。食い込んだ刃が、華墨の人工皮膚を・・・裂く 「くそっ!!」 鋼鉄の毒蛇に腕を拘束されたまま切り込む華墨。だが、引き手を殺されたへたれた斬撃は、あっさりとエルギールの腕甲でいなされ、挙句そのまま首を掴まれる (・・・ぐっ!) くぐもった呻きが漏れる。それは人間的な条件反射だが、神姫が「人がましく」振舞う為に動きの基礎に組み込まれている 「けだものを捕らえるには罠を使うでしょう?アタシはその罠。さぁ、ホントのアタシのフルコンボってやつを見せたげるわ!!」 首を掴んだ左手が捻られる、同時に右足が払われ、左腕の拘束を引き外す動きでそのまま吊り上げられる (これが・・・!?) 「まずは天(転)」 異様な体勢で転ばされ、なんとか残った右腕で受身を試みる 「間に人(刃)」 ぞぶりだかどすだかいう様な汁っぽい音と共に、引き抜かれ空を舞っていた刃が右腕に突き刺さる たまらず、そのまま顔面から地に倒れ付す華墨。打撃系の衝撃が、装甲ごしにでも強烈なダメージを全身に及ぼした 「最期は地に血の花を咲かせて逝きなさいな!アンタの名前に相応しい幕切れじゃない!!」 エルギールの哄笑、無理矢理体を起こそうとする華墨だが、最早戦闘能力が無きに等しいのはいかなる目で見ても明白だ (立ち上がる・・・ちから・・・) 武士が何かを叫んでいた、残念ながら華墨には何を言っているのか全く判らなかったが・・・ (ここで立ち上がる・・・ちからが・・・) だが、そんな力は華墨の中には無かった。愛も、怒りも、不屈の意思も、未だ華墨は本当の意味で理解など出来て居なかった 虚ろに過ぎるジャッジのマシンボイスを、ヴァーチャルスペースに全く意識があるままに、華墨は聞いていた 「華墨・・・負けちまったのか・・・?」 武士は腰を浮かせて、呆然とディスプレイを見ていた その肩に琥珀の小さな、冷たい手が掛かる迄、武士は彼女が入ってきた事にすら気付いていなかった 「ね、判った?闘うってこういう事なんだよ。体はヴァーチャルでも、彼女らが感じる恐怖は本物なんだ。」 小さな、だがはっきりした声だった 「だって・・・武装神姫って、バトルする為に創られたんだろ?」 のろのろと首を回す武士。琥珀の、多分名前の由来なのだろう琥珀色の瞳は、感情を深い所に隠していて、思考を読み取る事は今の武士には不可能だった 「確かに彼女達は闘う為に創られた。でもね、闘争本能を持たされていても、彼女達が本当に闘いを望んでいるかどうかは判らないんじゃないかな?」 「・・・え?」 「判らない?君は彼女のマスターだけど彼女は本当の意味で『君の神姫』になっているのかな?」 「当たり前だ!神姫は登録した人間をマスターとする様に出来てるんだろ?」 語気を強める武士、だが琥珀の口調にも表情にも、僅かな変化も見られなかった 「プログラムされた知性、プログラムされた感情、なら、忠誠心だってプログラムされたものなんだろうね」 「・・・」 にこりともしない、が、別に怒りも悲嘆も、いかなる色も彼女の表情には現れないのではないかと、武士は思った 「・・・」 「プシュ」と空気の抜ける様な音がして、華墨のバトルポッドが開く ゆっくり顔を上げる華墨に一瞬目をやってから踵を返す琥珀 「じゃ、するべき事はしたから・・・縁があったらまたね・・・」 視線だけ二人に向けて言い放つと、もうそのまま、むにむにと柔らかい足音だけ残して琥珀は去っていった 「・・・負けてしまったよ・・・マスター・・・」 「・・・あぁ・・・」 ここで取って付けた様な労いの言葉を吐く事が出来るのか?吐く資格があるのか?労ってやるべき存在?神姫は・・・? 玩具にそれをするのか?人間にそれをしないのか? 「・・・無事でよかったよ」 武士は恐ろしくばらばらな表情でようやくそれだけ吐くと、華墨を抱え上げポケットに入れ、無言でブースから出るのだった 「見事な『壁』役だったね」 「僕は厭だよ。本当はこんな役なんて」 「買って出た苦労だろう?私は何も頼んじゃいない」 「・・・・・」 「・・・君にとってはどうなんだい?」 「何がさ?」 「神姫とは高性能な知性を持った玩具なのか・・・?身長15センチの人間なのか・・・?君が佐鳴武士に叩き付けた問いについて・・・だよ」 「・・・そういう話は川原さんとでもしてなよ。帰ろうか?エルギール」 主よりも遥かに派手な神姫を肩に乗せて去る少女を見ながら、皆川はいかにも意味ありげに不気味に微笑んで見せるのだった 剣は紅い花の誇り 前へ 次へ
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ヒュゥン……。 軽やかな作動音と共に、私の意識は覚醒した。 機体各所の動作チェックの終了を受けて、ゆっくりと視覚素子を起動させる。 目の前にあるのは、人間の顔。 性別は女性。まだ少女と呼んだ方がいいのか、幼さの抜け切らないあどけない表情で、こちらをにこにこと見つめている。 「おはよう。気分はいかが?」 「あなたは……マスターですか?」 いきなりの問いに少女は面食らったのか、軽く目を見開いた。 「あの……」 けれど、マスターの認証は私達神姫にとって一番大事なこと。マスターを定めなければ、私はどう振る舞えばいいのかさえ分からないのだから。 「ふふ、せっかちなコね?」 艶やかな長い黒髪を揺らし、少女はくすりと笑う。 「……申し訳ありません。慣れていないもので」 「いいわ。考えたら、あたしも初めてだもの」 少女の手が私の方へ伸びてくる。色白の細い指が、私の頭をそっと撫でてくれた。 「あ……」 そのまま背中に手を回され、ひょいとお尻からすくい上げられてしまう。 バランスを取り戻すよりも早く、少女の細い指が私の足とお尻を包み込み、私を支える椅子となってくれた。 「私は戸田静香。あなたのマスターよ」 「戸田静香様……マスターと認証しました」 登録完了。 これで、最初にすべきことは終わった。 「マスターっていうのも堅苦しいわね。静香でいいわ……」 「……?」 いきなり呼ばれた固有名詞に、私は首を傾げる。 「あなたの名前。……気に入らない?」 「いえ、いきなりだったもので……」 そういえば、私自身の名前のことなど思いつきもしなかった。初期ロットとは言え、その手のバグは無いはずなのに……。 「我ながら、ちょっとシンプルすぎるかな、とも思ったんだけどね。名前なんて、シンプルなくらいがちょうど良いのよ」 話し方こそ大人びているが、仕草はどちらかといえば子供っぽい人だ。 「マスタ……静香も相当せっかちですね」 「似たもの同士、ってこと?」 「……はい」 「ま、いいわ。似たもの同士なら、仲良くやれるはずよね。きっと」 「はい!」 笑顔の静香は私を手に乗せたまま立ち上がり……。 「それじゃ……」 魔女っ子神姫 マジカル☆アーンヴァル ~ドキドキハウリン外伝~ その5 テンポ良くキーボードを叩く音が、部屋の中に響いている。ブライドタッチほど早くはないけれど、指一本よりははるかに早い、そんな速さで。 かちゃん。 リターンキーを強く叩く音で連なるタイプ音はようやく止まり、ボクは携帯ゲーム機から視線を上げた。 もちろんキーボードを叩いていたのはボクじゃない。 ジルだ。 両足でエンターキーへの着地をキメたまま、得意げにこちらへ振り返る。 「なぁ、十貴」 「何?」 ジルがPCの使い方を覚えたのはつい最近のことだ。最初は両手でトラックボール……ジルにPC用のマウスは大きすぎるから、ジル用に買ってきたもの……を転がすのが精一杯だったけど、キーボードをステップを踏む事でタイピングする方法を覚えてからは、ネットであちこちの掲示板なんかまで見るようになったらしい。 「それ、おもしれえの?」 ボクがやってる携帯ゲーム機を指差して、そう聞いてきた。 「まあまあかなー」 今やってるのは、もう40年近くも続いてるモンスターバトルゲームのシリーズ最新作。今は黄色の電気ハリネズミが、超高速でフィールドを突っ走りながら電撃を放っている。 「っていうかさ。そんなバーチャルな育成ゲームじゃなくて、もっとリアルな育成ゲームしてみたくねえ?」 「……はぁ?」 そもそも、育成ゲーム自体がバーチャルなゲームなんじゃ……。 「例えば、神姫とかー」 神姫も、機械の女の子を育てるって意味じゃ、育成の分野に入る……のかな? 「……ジルを育成するの?」 でも、ジルを見てる限り、神姫に育成要素があるとはとても思えな……。 「あぁ? 誰を育成するって?」 「……ごめん」 ほらね。どう見ても、神姫に育成ゲーム要素はないでしょ。 「あたしが十貴を育成してんだろが」 …………。 「……はいはい」 ボクは話を打ち切って、携帯ゲーム機に視線を落とす。 あ。メカ武装をまとったオレンジのティラノサウルスが出て来た。えっと、こいつ、まだ仲間にしてなかったっけ……? 「なぁ、十貴ぃ」 「……何が言いたいの、ジル」 ジルがこういう持って回った言い方をするときは、大抵何かある時だ。今日は何だろう。 だいたい予想はつくけどさ。 「なぁ、十貴。ウチは神姫買わねえの?」 やっぱり。 なにせ今日は、神姫の発売日なわけだしね。 「うちにそんなお金あるわけ無いでしょ……」 ネットで見た限り、神姫は一体でちょっとしたPC並みの値段がするらしい。スペックだけ見れば相応どころかむしろ割安だとは思うけど、中学生のボクにそんなお金があるはず無いし……父さんが1/12のモータライズボトムズ相手に激しい多々買いをを繰り広げて大変な事になってる我が家にだって、そんな余裕があるはずもない。 ちなみにジルが使ってるボクのPCも、父さんが仕事で使ってたヤツのお下がりだ。 「そもそも、神姫の複数買いって出来るの?」 「ほらー。ここの人達だって、黒子と白子げとー、とか書いてるじゃんか」 ジルってば、何処のページを見てるかと思えば……。まったくもう。 「何? もうそんなスレ立ってるんだ……」 マウスでスクロールを掛けて、ざっと斜め読みしてみる。 「昨日からフラゲ組がハァハァしてるよ。どこも在庫切れになってるみたいだけど」 少し前に、テストバトル参加者からの情報リークで(ボクじゃないよ)アーンヴァルの空中戦が圧倒的優勢って話になってたから……アーンヴァルの方が沢山売れてるのかなとも思ったけど、ここを見てる限りじゃどっちも同じくらい売れてるみたいだ。 「物売るってレベルじゃねえぞって……何だかなぁ」 三十年くらい前に流行語大賞もらった台詞だっけ? たまに父さんが口走ってるけど。 「だから十貴。うちにも一人買ってこようよー。妹が欲しいよー」 「そんなの、父さんに言いなよ」 っていうか、さっき在庫切れって言ったばっかりじゃない。今頃探しに行ったって、どこも売り切れだと思うよ。 「司令はボトムズに掛かりっきりだから相手にしてくれないんだよー」 「じゃあ無理。諦めなよ」 趣味に全力投球してる時の父さんは、家が火事になってもきっと気付かない。玩具ライターだから仕事に集中するのは良いことなんだけど、端から見てると黙々と遊んでるようにしか見えないのが最大の欠点だったりする。 「なんだよ。妹欲しいなー。妹ー」 ジルがそんなことをブツブツ言ってると、部屋の窓が唐突に開け放たれた。 「十貴ーっ!」 入ってきたのは、いつも通りに静姉だった。 「ん、どうしたの? 静姉」 何だか物凄く上機嫌だ。ボクで着せ替え人形ごっこする時でも、ここまで機嫌は良くない気がする。 何だろう。 すごく、嫌な予感が……。 「ほら、おいで!」 静姉はボクの不安なんか知らんぷりで、外に向かって声なんか掛けている。 誰だろう。友達を連れてくるなら、普通に玄関から連れてくると…… 「あーっ!」 思いかけたボクの思考を、ジルの叫び声が一気に吹っ飛ばした。 「あ! 買ってきたんだ!」 静姉に連れられて入ってきたのは、真っ白な武装神姫だった。小さなレースをあしらった可愛らしいワンピースを着て、ふよふよと頼りなげに浮かんでる飛行タイプの機体は、天使型のアーンヴァルだ。 起動したばかりで、まだ見るもの全てが珍しいんだろう。ボクの部屋に入った後も、きょろきょろを辺りを見回している。 「日暮さんとこに入荷情報があったから、お姉ちゃんと昨日の晩から並んだわよー。ほら、挨拶して!」 徹夜明けで底抜けにハイテンションな静姉の言葉に、アーンヴァルはぺこりと頭を下げた。 「えっと、アーンヴァルの花姫って言います。どうぞ、よろしくお願いします」 ちょっと舌っ足らずな喋り方が、随分と可愛らしい。この間の大会で見たアーンヴァルは、みんなもっと凛とした、お姉さんっぽい感じだったけど。 「ボクは鋼月十貴。よろしくね、花姫」 「……十貴さま?」 うわぁ。 普通の神姫は名前にさま、なんて付けるんだ。 「ふ、普通に十貴でいいよ。それと、こっちはうちのジル。仲良くしてあげて」 そうは言ったけど……大丈夫かな、ジルのやつ。この間のテストバトルでアーンヴァルにボロ負けした事、気にしてなきゃ良いけど。 花姫は気が弱そうだし、いきなりガン付けて泣かせるような事だけはしないで欲しい。 「よろしくね、ジル」 「ジルさん、っておっしゃるんですか?」 同じ神姫相手にもさん付け……。 なんか花姫見てると、今までジルで培ってきた神姫に対しての感覚が、かなりズレてるような気がしてくる。 「そうだよ。あたしのことは、お姉様って呼びな!」 ありゃ。怒るどころか、偉そうに胸なんか張ってるよ。これなら花姫を泣かせるようなこともしないっぽいな。 ……でもいくら何でも、お姉様はどうだろう。 「ちょっとジル?」 「……ダメ?」 さすがの静姉も、ジルのお姉様発言に苦笑気味だ。 「お姉ちゃん、なら許してあげる」 ……あ。それならいいんだ。 「じゃそれでひとつっ!」 「はい、お姉ちゃん」 「う……」 そう呼ばれた瞬間、ジルの動きがぴたりと止まった。 「な、なあ、静香。このコ、あたしがもらっちゃダメ?」 おいおいおいおいおい。 「ダメよー。花姫はウチの子だもん。ね、花姫ー?」 「ねー?」 満面の笑みで花姫の顔を覗き込んだ静姉にオウム返しで答えながら、花姫も静香を真似して首を傾けてる。 「花姫は妹なんだから、ジルもヒドいことしちゃダメだよ?」 まあ、さっきの様子じゃ、しそうにないけど。 「当たり前だろ! バトルと花姫は別扱いだよ。なー?」 「なー?」 今度はジルの真似っこだ。 ああもう、可愛いなぁ。 花姫を中心にみんなで遊んで、あっという間に日が暮れて。 「それじゃ、また来るわねー」 静姉の帰りは来た時と同じ窓からだ。傍らにはふわふわと浮かんでる花姫がいる。 飛び方の練習も少ししたから、来た時ほど危なっかしい感じはしない。 「花姫ー。帰ったら、あなたの新しいお洋服作ってあげるからねー」 「ほんとですかっ!」 花姫は神姫というその名の通り、本当に女の子らしい性格の子だった。殊に静香お手製のワンピースがお気に入りみたいで、ジルが飛行ユニットを貸して欲しいと聞いた時も、「ユニットはいいけど服はダメです」って言うほどだったりする。 「だから、どんなのがいいか一緒に決めようねー」 静姉も自分が作った服を喜んで着てくれる子がいるのが嬉しいらしくて、今日は本当に、ほんっとーーーに珍しく、ボクに服の話題を振ってくる事が無かった。 「それじゃ、お休み。静姉」 「じゃねー」 窓が閉まって、静姉が瓦の上を歩いていく音が少しして。 静姉が自分の部屋に入ってしまえば、賑やかだったボクの部屋もしんと静かになる。 「なぁ、十貴」 そんな中でぽつりと呟いたのは、ジルだった。 「花姫、可愛かったなぁ」 「そうだねぇ」 まあ、今日いちばん花姫を可愛いって言ってたのは、当のジルだった気がするけど。 「あのさ」 可愛くてたまらない妹分が帰ってしまって寂しいのか、ジルに何となく元気がない。 「んー?」 ボクは出しっぱなしになっていたゲーム機を片付けながら、ジルの言葉に返事を投げる。 「テストが終わって、あたしが正式に十貴のモノになったら……さ」 「うん?」 バトルサービスの本サービスが年明けから年度末に延びたこともあって、ジル達のモニター期間は最初の予定からもう少し長くなっていた。 バトルサービスがサービスインしてから半年。 それが過ぎればモニターは終わり、ジルは正式にボクの神姫になる。 二人の関係は何も変わらないだろうけど、心情的にはちょっと良い気分だ。 「あたしのCSC抜いて、花姫の使ってるセットに差し替えてもいいぜ?」 ぽつりと呟いたその言葉に、ボクは片付けようとしていた筐体を取り落としそうになった。 「あたしだって、自分がガサツな事くらい分かってんだよ。けど、あんな可愛い子に生まれ変われるんなら……」 ボクはため息を一つ吐いて、筐体を棚に片付ける。 「……バカ言わないの」 神姫のコアユニットと素体、そしてCSCは不可分だ。三つのパーツにジルの個性は等しく宿る。 即ち、三つが揃ってこそのジル。どれが欠けても、ジルはジルでなくなってしまう。 「ジルはジルだよ。そんな事するくらいなら、もう一体神姫買ってくるって」 花姫は確かに可愛いけど、ジルと引き換えに手に入れるものじゃ、決してない。 迎えるなら、ボクとジル、二人でないと。 「金もないのに?」 そんなことは分かってる。 「高校生になれば、バイトも始められるから」 武装神姫のロードマップに照らし合わせれば、ボクが高校生になった頃には、第二期モデルのハウリンやマオチャオ、ヴァッフェバニーも発売になっているはず。 高校なんてまだまだ先の話だけど……ジルの妹の選択肢が増えるって意味じゃ、悪いことだけじゃないと思う。 「なんだよ。学生のウチから神姫破産かぁ?」 皮肉めいた調子で、へらりと笑う。 言葉の意味は分からなかったけど、よかった、いつものジルの喋り方だ。 「引き込んどいて、良く言うよ」 まあ、それも悪くない。 「……十貴」 「何?」 「あんたが主人で、良かったよ」 いつになく本気なジルの言葉。 「ボクもジルが神姫で……良かったよ」 それはあまりに突然で、驚いたボクは言葉を詰まらせる。 「……ンだぁ? 今の間は」 けど、それがマズかった。 「いや、それは……っ!」 「ホントは花姫みたいな可愛い子が良かったなーとか思ってるんじゃねえだろうな! あたしみたいに尻に敷いたりしないだろうしさ」 ボクの肩にひょいと飛び乗り、耳元でがなり立てる。 「そんな、思ってないって! いたたたたた!」 って、耳ひっぱらないで、耳ーっ! 「正直に言え。今なら思ってても許してやる。あたしゃ本日限定で、すっげー心が広いんだ。な?」 いや、ジル、心が広い人は耳とか髪とかひっぱらないと思うよって痛いってば。いーたーいーーー! 「……ごめん。花姫みたいな神姫なら、もう一体欲しいなとは思ってた」 「オーケー。そいつはあたしも同感だ」 ぱっと手を離し、ジルはボクの肩で満足そうに笑ってる。もう、乱暴なんだから。 まあ、ずっと塞ぎ込んでるよりはマシか。 「でも、ボクとジルが一緒になれたのも何かの縁だよ。ジルが思ってるような事は、するつもりないから」 それだけは本当だった。 ジルのCSCを抜いて花姫にしようだなんて、思いつきもしなかったんだから。 「頼むぜ。これからもヨロシクな、マイマスター」 「うん。今後ともよろしく、ジル」 その日、ボクは本当の意味でジルにマスターって認められたんだけど……。 それに気付くのは、もう少し経ってからになる。 戻る/トップ/続く
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軽量級クラス用武装:“Valkyrja”軽量級武装コンポーネント“Weiss Valkyrja” 軽量級武装コンポーネント“Grau Valkyrja” 軽量級武装コンポーネント“Schwarz Valkyrja” CQB戦術用武装:“Heiliges Kleid”CQBコンポーネント“Rotes Heiliges Kleid” CQBコンポーネント“Blaue Heiliges Kleid” CQBコンポーネント“Gruenes Heiliges Kleid” 武装展開機構:“W.I.N.G.S.” “Valkyrja”用オプション:“SSS”“Weiss Valkyrja”用“SSS”:“スヴェンW” “Grau Valkyrja”用“SSS”:“ビルガーG” “Schwarz Valkyrja”用“SSS”:“ファルケンS” 軽量級クラス用武装:“Valkyrja” 槇野晶が、己の技術・知識・信念を体現する為に産み出した装備一式。 基本的に晶所持の神姫(アルマ、ロッテ、クララ)の各神姫専用である。 軽量級ランク専用武装であり、装備する神姫の特性を活かす事が可能。 当初はこれ一式のみで戦いを切り抜ける予定だったが、クララによって CQBへの対応力不足……コンパクトな戦闘力に欠けている事が判明。 これを補う為に、後付で“Heiliges Kleid”が搭載される事となった。 同時に“Valkyrja”も、各種見直しによりバージョン2へと進化する。 コンパクトさを“Heiliges Kleid”に求める事により、“Valkyrja”は 重武装をより志向する結果となり、“Valkyrja Rocks”が増設された。 現在ロールアウトしているのは、“白”“灰”“黒”の3系統である。 “白”がロッテ専用であり、“灰”はクララ、“黒”はアルマが使う。 軽量級武装コンポーネント“Weiss Valkyrja” 【武装データ】 Ver.:2.018w [[ヴァルキュリア・ロクス増設タイプ]] 武装:hmLSU_AL006 レーザーガンランス“アインホルン”(右腕) hmBDS_AL001 強制放電装置“ゼーレイッシャー”(左腕) hmHMW_AL123 円環型加速器“フライアークライス”(頭部) hmSWS_AL061 戦略装甲“ヴァルキュリア・ロクスW”(腰部) ※この他、共通武装を装備・使用できる 装備:huMSS_AV022 ヘッドセンサー・アネーロ・カスタム(頭部) ruWBA_NO666 reFLT白き翼・カスタム(背部→上半身) hmOAM_AL007 甲冑型メインアーマー(上半身・腰部・両腕) exSLD_AV012 ガードシールド・カスタム(両腕側部) luBUL_AV003 ランディングギアAT3・カスタム(両脚) ※この他、共通装備を装備・使用できる 色調:ベースは白、次いで蒼穹の色が多く、ワンポイントに金。 解説:ロッテの初期装備として開発された、軽量級ランク用の 武装一式。ロッテがアーンヴァルタイプであった名残。 製造コンセプトは「天使を越え、戦乙女へと至れッ!」 アーンヴァルタイプの基本性能を参考にして、槇野晶が彼女独自の 改良を加えた武装。戦闘基本プログラムの関係上、元の素体である アーンヴァルタイプともっとも相性が合う様に再設計されている。 “アインホルン”は、GEモデルLC3レーザーライフルに各種改造を 施した専用装備であり、通常は実体型ランスとして使用可能だが、 穂先の射出孔からはレーザーを射出可能。恒常安定化を行う事で、 レーザースピアや対実体弾(爆発物以外)用のシールドに変化する。 “ゼーレイッシャー”は、MMSの共通規格部品である非接触型の 充電端子に干渉し、相手の電力を吸収する特殊マニピュレーター。 規約範囲に収める為、目標物との接触状態でしか吸収は行えない。 吸収電力は放出したり、“アインホルン”等の武装に給電できる。 構造上大柄な装備だが頑健な作りの為、盾としても運用ができる。 “フライアークライス”は淡く輝く、巨大な半透明の円環である。 極薄い緑色をした天使の輪は、通常兜上面にマウントされている。 外せばチャクラムとなる他、回転式のレーザー加速器を備えており 対光学兵器用バリアやレーザーの光条集束・出力強化にも使える。 最大出力で“アインホルン”と連携、レーザードリルを起動可能。 “ヴァルキュリア・ロクスW”は三種類の“Valkyrja”に搭載した 追加装甲である。同時に戦闘時間延長用の拡張バッテリーであり、 機動性を向上するブースター機能も備えている。更なる特徴として タイプに応じて、専用大型武器に変形する機能も兼ね備えている。 Wタイプは、前部を砲身・後部を照準装置及びジェネレータとして 連結させる事で、大型リニアレールガンとして運用する事が可能。 専用ジェネレータを備える事で、超高速望遠距離への狙撃も行う。 総弾数は、左右で12発ずつ。隠し武器故、容量は抑えめである。 “白き翼・カスタム”は、構造材の大幅な見直しが図られた結果、 素体を覆う様に動かす事で、対爆発防御装甲としても使用が可能。 リアウイングAAU7の推進器を組み込み、見た目より機動力も高い。 代償として大型になったが、威嚇効果もある為に放置されている。 “AT3・カスタム”は、正規品に装甲追加と接地部の接続を行い、 地上走行性能の確保を行った。短距離ジャンプを交え歩行する為、 接地部は鳥脚の様に指が4方へ広がっており、衝撃吸収力が高い。 畳む事により従来通りの飛行性能を確保できる他、下に束ねる事で 突き刺す様な強烈なキックを、飛翔後に上空から見舞う事が可能。 軽量級武装コンポーネント“Grau Valkyrja” 【武装データ】 Ver.:2.001g [[ヴァルキュリア・ロクス増設タイプ]] 武装:hmCLU_AL111 スペルチャンバー“ライデンシャフト”(右手) hmDSU_AL222 スペルバインダー“シュリュッセル”(左手→左腕) hmHMW_AL333 スペルブースター“フライアーシャイン”(頭部) owRAS_HR555 ぷちマスィーンズ・カスタム(背部・両肩・両膝) owSFS_NO666 ホウキ・オブ・ザ・CK・カスタム(特殊) hmSWS_AL094 戦略装甲“ヴァルキュリア・ロクスG”(腰部) ※この他、共通武装を装備・使用できる 装備:huMSS_HR023 頭甲・咆皇+マジカルハット・カスタム(頭部) ruWBA_NO745 reFLT黒い翼・カスタム(背部→上半身) hmOAM_AL013 甲冑型メインアーマー(上半身・腰部・両腕) rmSAM_NO009 ヴィーゼ・STHP・スカート・カスタム[黒](腰部) exAMU_AV012 増設アーマー・カスタム(両腕) luHSL_HR007 脚甲・狗駆・カスタム(両脚) ※この他、共通装備を装備・使用できる 色調:ベースは薄灰、次いで翡翠の色が多く、装飾品は真鍮色。 解説:クララの初期装備として開発された、軽量級ランク用の 武装一式。ハウリンタイプの意匠を多少は残している。 とは言え、明確な犬っぽさはヘッドパーツ以外にない。 製造コンセプトは「魔術を高めて、戦乙女になれッ!」 「即応型空間ハッキングによるヴァーチャル空間内事象の変遷」、 即ち“魔術”での戦闘を円滑に行う為、晶がクララ専用に作った。 “魔術”の基本システムは、エルゴ店長・日暮が基礎設計を担当。 他にも汎用系であるハウリンタイプに合わせ、多様な装備を搭載。 但し銃器や火砲類だけはどうしても自身が直接使用できない為に、 これまたクララにしか扱えない、極めて特殊な射撃装備を配した。 “ライデンシャフト”は専用のショートスピア。近接攻撃以外にも クララの特殊能力である、“魔術”の性能を高める為のデバイス。 幅広の穂先を持ち、その下には拳銃に酷似した緊急充電システム。 装填したカートリッジを反応させる事で、瞬間的に電力を補える。 このシステムにより産み出したエネルギーで、ハッキングによって 本来消耗する筈の膨大な電力を、1発で1回賄う事が可能となる。 “魔術”執行時は穂先がアンテナ代わりとなる、優秀な制御装置。 “シュリュッセル”は、巨大な書物の形状をした専用の盾である。 普段は小脇に抱えて保持するが、展開する事で左腕に接続が可能。 その場合、本の姿から花弁の様な多層構造の円形シールドになる。 非常に頑丈な構造をしたこの書物は優秀なストレージ装置であり、 “魔術”で攻防両面に用いる基本メソッドを記録する事によって、 その展開速度と信頼性向上・負荷の軽減を図る目的で用いられる。 当装備の運用の為、日暮設計のドライバーがクララに内蔵された。 “フライアーシャイン”は蛍光色に輝く、巨大な天使の輪である。 薄い青色をしているこれは、他のコンポーネント同様武器になる。 非揮発性のメモリを搭載しており、“魔術”を強化・拡大したり、 “魔術”でシールドを作る際のフレームとして利用する事が可能。 現出したシールドは、ヴァーチャル空間ではかなりの硬度を誇る。 当武装に於いて“ぷちマスィーンズ”は徹底的に改造を施された。 装甲に搭載する為の格納形態が設けられ、この状態では5機全てが 全く同じ構造をしている。背部ユニットの指示で四肢についている 4機が分離・変形して攻撃を開始する点は、改造前と変化はない。 但し移動法はキャタピラ等ではなく、3枚の電磁式安定翼である。 直接銃器が使用できないクララに代わりハンドガンを使用する他、 陣形を組んでクララの“魔術”の依り代となり、突撃戦闘を行う。 非常に優秀な遠隔攻撃システムだが、可愛げが失われたのが欠点。 “ホウキ・オブ・ザ・クリーンキーパー・カスタム”も改造済み。 藁箒ではなくスティック型の掃除機に似たデザインになっており、 実際にエアブロアー兼サイクロン掃除機として清掃ができる上に、 推進装置の“黒い翼・カスタム”と組み合わせ、高速飛翔が可能。 更にクララの“魔術”を応用する事で、遠隔操作が可能となった。 これにより、柄に内蔵された対物狙撃ライフルを自律運用できる。 但し間接的にも程がある苦肉の策なだけに、命中精度は若干低い。 その代わり命令次第で、ぷちマスィーンズとの連携攻撃も行える。 実際の識別としては、ぷちマスィーンズと同型機体の扱いである。 “ヴァルキュリア・ロクスG”は三種類の“Valkyrja”に搭載した 追加装甲である。同時に戦闘時間延長用の拡張バッテリーであり、 機動性を向上するブースター機能も備えている。更なる特徴として タイプに応じて、専用大型武器に変形する機能も兼ね備えている。 Gタイプは“ぷちマスィーンズ”同様の自律攻撃システムになる。 “ドライエクス・ジステム”と呼ばれる八機の端末は、スカートを 離脱して、デルタ翼型の小型戦闘機に変形。レーザーガンで戦う。 勿論クララ用である為、“魔術”の依り代にも転用が可能である。 実際の識別としては、ぷちマスィーンズと同型機体の扱いである。 “黒い翼”は甲虫類と鳥類の翼を折衷した様な、天使とも悪魔とも つかない独特の意匠に大改造されている。外見上の特徴だけで無く 装甲板や“魔術”の増幅・拡散パネルとしての機能も備えられた。 鋭角的な飛行性能は維持されたが、最高速度が若干低下している。 “頭甲・咆皇”には“マジカルハット・カスタム”が被せてある。 決してこの帽子は虚仮威しでなく、咆皇との連動により“魔術”を 利用して、超常的空間把握を行う為のセンサーを搭載した特注品。 犬耳がマジカルハット内部の増設センサーで隠されるのが、欠点。 “脚甲・狗駆”は、安定性を重視した為か逆関節風の構造に変化。 ハイヒールの様な脚になっている為、踏み込みが深くなっている。 反面格闘戦には適さないが、これはクララに限れば問題ではない。 更に裏側に折り込まれた大型ブースターを展開して、左右で結合。 これによって、空中機動重視のモノレッグブースター形態になる。 軽量級武装コンポーネント“Schwarz Valkyrja” 【武装データ】 Ver.:2.036s [[ヴァルキュリア・ロクス増設タイプ]] 武装:hmPBS_AL009 リボルバーランス“フラーメイェーガー”(右手) hmWCS_AL001 クローシールド“アイゼンナーゲル”(左腕) hmHMW_AL123 仕込みリング“フライアーシュヴェルト”(頭部) hmSWS_AL030 戦略装甲“ヴァルキュリア・ロクスS”(腰部) ※この他、共通武装を装備・使用できる 装備:huMSS_AL023 可変型装甲ヘッドギア(頭部) ruEAS_SF004 DTリアユニットplus・カスタム(背部) ruMWA_AL001 可変機動装甲“フリューゲル”(背部) auPUA_SF004 “チーグル”アームパーツ・カスタム(DT部) hmOAM_AL009 甲冑型メインアーマー(上半身・腰部・両腕) exSLD_SF013 ガードシールド・カスタム(両腕側部) luPUL_SF002 “サバーカ”レッグパーツ・カスタム(両脚) ※この他、共通装備を装備・使用できる 色調:ベースは黒、次いで鮮血の色が多く、ワンポイントに銀。 解説:アルマの初期装備として開発された、軽量級ランク用の 武装一式。アリアがストラーフタイプである名残も散見。 製造コンセプトは「今産まれ変わり、戦乙女になれッ!」 ストラーフタイプの基本性能を参考に、槇野晶が大改修した武装。 戦闘基本プログラムの関係上、近接戦闘に長けた性能を備えている ストラーフタイプと最も相性が合う様、白兵武装を多く搭載する。 “フラーメイェーガー”は専用のヘビースピア。各種小型銃器や、 シュラム・リボルビンググレネードランチャーの機構を利用した。 細長い穂先に対して、根本には無骨なリボルバー式の機構を搭載。 炸薬の爆発力で穂先をスライドさせて、大半の装甲を貫通できる。 更に突き刺した後、各種弾丸を零距離で撃ち込む事が可能である。 榴弾からライフル弾まで、装填された弾薬により性能が変化する。 “アイゼンナーゲル”は、射出式のクローを搭載したバックラー。 射出には、ヴァッフェバニーから移植したスラスター二基を使う。 SMG-A4W“ジャマダハル”サブマシンガンを射出部に搭載しており 通常時はシールドとして利用するが、折り畳んだクローを展開して 格闘戦に利用可能。他にも射出して相手を引き寄せたり、格納式の アームで遠隔射撃を行う等、様々な運用が可能な特殊武装である。 “フライアーシュヴェルト”は蛍光色に輝く、巨大な円環である。 薄い黄色をしており一見飾りに見える頭頂部の“天使の輪”だが、 実は折り畳み式のサイズ2本をリング状にした、隠し武器である。 分離・変形を行う事により、双振りのヒートショーテルになる他、 変形・再合体させる事で、簡易スピアとしても利用が可能になる。 この槍は銃剣代わりに、後述のニードルライフルへと搭載できる。 “フリューゲル”は“reFLT 悪魔の翼”改造のマルチバインダー。 翼として空中機動に用いる他、分離等によって多数の武装に変化。 ブースターを数機組み込んではあるが、複雑極まりない構造の為に 飛行装置としては性能が劣化しており、専ら走行の補助に用いる。 個々の武装は劇中で使用されていない為、詳細は未だ不明である。 黒翼を折り畳み、胸部装甲に“アイゼンナーゲル”を装着すれば、 防弾・防刃・耐熱に優れた装甲外套“フェーデンシルト”となる。 他の“Valkyrja”の翼で行う類似した形態よりも、防御力が高い。 翼と基部を分離した場合、溶断兵器“ヒッツェメッサー”双振りと 電磁式ニードルライフル“トーテンタオフェ”一挺へと変形する。 後者には“フライアーシュヴェルト”で作ったスピアを接続でき、 突き刺してから零距離射撃を行う為の白兵装備として利用できる。 “ヴァルキュリア・ロクスS”は三種類の“Valkyrja”に搭載した 追加装甲である。同時に戦闘時間延長用の拡張バッテリーであり、 機動性を向上するブースター機能も備えている。更なる特徴として タイプに応じて、専用大型武器に変形する機能も兼ね備えている。 Sタイプは六枚のスカート基部に三連節のアームを搭載しており、 アーム先端に装着されたブレードを利用して、自らの手を使わずに 白兵戦闘を行える。旋回させれば周囲を薙ぎ払う事も可能である。 “チーグル”及び“サバーカ”は、正規品にブースターを搭載した 改造品である。“フリューゲル”が失った機動力の補完をする為、 出力は相当高めに設定されている。“チーグル”に接続されている DTリアユニットは肩相当の部品が改修された為に、“チーグル”を 折り畳み変形させた後で追加アームを背部に逃がして、高機動用の 補助ブースターとして利用する事が可能である。ユニット後部には ウェポンラックも増設され、“フラーメイェーガー”を搭載可能。 CQB戦術用武装:“Heiliges Kleid” 槇野晶が、軽量級バトルにおける閉所対応力を確保する為に開発した、 神姫用の特殊強化装甲服。“Valkyrja”の保護ケースも兼ねている為、 これらを装備できる神姫……即ち晶の“妹達”にしか装備はできない。 CQB(戦略的近接戦闘)に対応する事を主目的として設計されており、 防御性能・機動性能・行動限界時間が“Valkyrja”よりも優れている。 その反面飛行能力は搭載できない上、武装も小規模になってしまった。 故に“Valkyrja”への移行が、装甲パージによって可能となっている。 現在ロールアウトしているのは、“紅”“蒼”“翠”の3種類であり、 各神姫のパーソナルカラー(アルマ、ロッテ、クララ)に対応している。 CQBコンポーネント“Rotes Heiliges Kleid” 【武装データ】 武装:hmMPS_AL014 キャノンナックル“マサムネ”(両腕) ※この他、共通武装を装備・使用できる 装備:hmHMD_AL101 多機能バイザー“ホーリースクエア”(頭部) hmPMA_AL102 電源内蔵型外套“プロテクトコート”(肩~上半身) hmADV_AL103 アーマードレス“ガーディアンハート”(胸~腰) hmLAU_AL104 ライト付腕部装甲“ストレイライト”(腕部) hmDRS_AL105 走行装置付ブーツ“アサルトキャリバー”(脚部) ※この他、共通装備を装備・使用できる 色調:全体としては深い赤が多く、縁は黒色。装飾品は銀メイン。 解説:アルマのCQB用に開発された、特殊機動装甲服。 全体としては、メイド服に近いシルエットを持つ。 ストラーフタイプがCQBに用いる為の、槇野晶製作特殊ドレス。 外見にも気が配られている為、神官とメイドが融合したデザイン。 着用者の特性を更に特化し、格闘戦をメインに行う設計になった。 “マサムネ”はリボルバー式の火薬炸裂機構と三連式回転リングを 備えた特殊な拡張アームであり、格闘戦に際して真価を発揮する。 回転リングの遠心力で垂直軸を安定・打撃の威力を集中させた上、 打突時に火薬を炸裂させる事で、衝撃を体内に伝える事が出来る。 使用する火薬は、スピードローダーを使って再装填が可能である。 “ホーリースクエア”とは各種センサーや通信機、更にスコープや 追加カメラを搭載した、“アネーロ”の流れを汲む大型バイザー。 外見は少し背の高いお洒落な帽子という、趣味的スタイルである。 “ストレイライト”はこれと連動するフラッシュライトを備えた、 服と一体化した様な腕部装甲でありストロボ機能も完備している。 CQBコンポーネント“Blaue Heiliges Kleid” 【武装データ】 武装:hmMGS_AL014 バスターライフル“ムラクモ”(右手) ※この他、共通武装を装備・使用できる 装備:hmHMD_AL201 多機能バイザー“ホーリースクエア”(頭部) hmPMA_AL202 電源内蔵型外套“プロテクトコート”(肩~上半身) hmADV_AL203 アーマードレス“ガーディアンハート”(胸~腰) hmLAU_AL204 ライト付腕部装甲“ストレイライト”(腕部) hmDRS_AL205 走行装置付ブーツ“アサルトキャリバー”(脚部) ※この他、共通装備を装備・使用できる 色調:全体としては深い青が多く、縁は白色。装飾品は金メイン。 解説:ロッテのCQB用に開発された、特殊機動装甲服。 全体としては、メイド服に近いシルエットを持つ。 アーンヴァルタイプがCQBに用いる為の、槇野晶作特殊ドレス。 外見にも気が配られている為、神官とメイドが融合したデザイン。 着用者の特性を活かし、射撃をメインに戦える設計になっている。 “ムラクモ”はショートバレルのアサルトライフルであり、両手で 構える事でフルオートや三点バースト等の制圧射撃が可能となる。 銃の下部に障害物破砕用のソードオフ・ショットガンを搭載する。 更に狙撃用の伸長バレルとレーザーサイトを上部に搭載しており、 展開してバレルの折り畳み式バイポッドを開けば、狙撃銃になる。 “プロテクトコート”は、女性が着るケープやコート類を模した、 硬質のマントである。装甲板の狭間に大型補助バッテリーを搭載。 防御力だけでなく神姫の稼働限界時間も、大幅に延長してくれる。 縁がエッジ加工されており、装甲パージ時は強力な弾丸ともなる。 それを見越してか、パージ待機時には装甲板が水平に起きあがる。 CQBコンポーネント“Gruenes Heiliges Kleid” 【武装データ】 武装:hmMDS_AL014 グレネードダガー“シラヌイ”×16(両手) ※この他、共通武装を装備・使用できる 装備:hmHMD_AL301 多機能バイザー“ホーリースクエア”(頭部) hmPMA_AL302 電源内蔵型外套“プロテクトコート”(肩~上半身) hmADV_AL303 アーマードレス“ガーディアンハート”(胸~腰) hmLAU_AL304 ライト付腕部装甲“ストレイライト”(腕部) hmDRS_AL305 走行装置付ブーツ“アサルトキャリバー”(脚部) ※この他、共通装備を装備・使用できる 色調:全体としては深い翠が多く、縁は灰色。装飾品は真鍮色。 解説:アルマのCQB用に開発された、特殊機動装甲服。 全体としては、メイド服に近いシルエットを持つ。 ハウリン型の神姫がCQBに用いる為の、槇野晶製作特殊ドレス。 外見にも気が配られている為、神官とメイドが融合したデザイン。 トリッキー戦闘を旨としており、専用武装のラインナップも異色。 “シラヌイ”は一見すると、持ち手の短いダガーである。鍔部分に 瞬発用小型ブースターが搭載されており、実際は投擲武器である。 柄部分はバッテリーであり、目標への刺突後に電力を解放する事で 周囲の敵を巻き込んで、爆弾の様に破壊させるのが本来の使い方。 両腕下部には充電装置を兼ねたナイフホルダーが搭載されている。 “アサルトキャリバー”は、小型電磁式ローラーブレードである。 4つの駆動輪は普段踵部に折り込まれているが、遠隔指令によって 瞬時に展開し、装着者を高速で移動させる事が可能となっている。 通常のローラーブレード並みかそれ以上に技量が要求される物の、 地上を走る限りに於いては小回りと速度に優れた移動用デバイス。 その加速度を利用して、付属の脚部装甲から繰り出す蹴りは強力。 武装展開機構:“W.I.N.G.S.” “Weapon Installing Nanomachine-Guide Synchronizer”の通称。 “Heiliges Kleid”の実装に伴い、晶が以前入手した流出品を元に 独自の改良を施した、ヴァーチャル空間用のデータ制御システム。 その実用化には、クララと日暮の解析が大きく貢献している模様。 メインシステムを封入したペンダント、ナノ単位のデータ誘導体を 展開・制御する両耳のピアス、背部のストレージユニットで構成。 ディスクが入った小型DVDプレイヤーの様なユニットが特徴的。 実際に搭載されているのは、非駆動型・非揮発性の大容量メモリ。 超高効率でデータを圧縮・保存し、それを必要に伴い展開する事で 設定したポイントに対して、瞬間的なデータの変化を発生させる。 これにより、神姫は装備の瞬間的変化──“変身”を可能とする。 但し、物理的には“Heiliges Kleid”装着状態でエントリーする。 更に“Heiliges Kleid”から“Valkyrja”への装備変更それ自体は 晶の工作技術によって(強引ながら)物理的に可能である。その為、 この機能は非武装状態から“Heiliges Kleid”への変遷に用いる。 実際はもう一装備を格納できるが、所要時間が増える危険がある。 覚えた事を拘りに注ぎ込む辺りに、晶の特長が出ていると言える。 なお、ゼンテックスマーズ社の研究が参考になっているらしいが、 晶がこの技術を一体どこから入手してきたのかは、誰も知らない。 “Valkyrja”用オプション:“SSS” “Strike Swan System”の略称。“Valkyrja”の更なる重装化を行える 武装であり、“アーマメント・シールド・ブースター”に分類される。 正規販売用のテスト武装である物の、現在は三姉妹専用になっている。 その外殻には全て耐熱加工が施されており、レーザー系の攻撃に強い。 防御力・機動力・出力、いずれを取ってもかなりの性能ではあるのだが 反面これで“Valkyrja”は、進化の限界を迎えてしまう可能性がある。 だが“鳳凰カップ”への参戦を迎え、遂にロッテ専用機が開発された。 その後にアルマ用とクララ用も開発され、3on3にて実践投入される。 様々な運用を行う事が可能であり、衝突角としてぶつける戦法の他にも 全身に装着して長距離行軍用装甲服として機能させたり、高機動飛行を 成し遂げる他、各機種固有武装を展開する事も可能である、複合武装。 これを装着した神姫は“Valkyrja・Skjald-maer・Phase”と呼称する。 現時点で開発を計画しているのは“白”“灰”“黒”の3機種である。 “白”がロッテ専用であり、“灰”はクララ、“黒”はアルマが使う。 この色は、そのまま運搬用鳥類型ぷちマスィーンズのカラーでもある。 “Weiss Valkyrja”用“SSS”:“スヴェンW” 【武装データ】 Ver.:0.983w [[ディバイド・パニッシャー・コンセプト]] 武装:hmLGP_AL011 放射配列型レーザーガンポッド×10基(盾部) hmLJD_AL036 光学攻防用チャフショットガン×2挺(盾部) hmMFL_AL001 多次元測距用レーダーアーム×4基(盾部) hmSCL_AL033 インパクトカノン“ミョルニル”(両手部) hmCMS_AL036 CMMランチャー“ギャッラルホルン”(両手部) ※この他、“Weiss Valkyrja”の武装を装備・使用できる 装備:hmPMC_AL001 防御用可変支援機“スヴェンW”(頭・胸・背) hmABS_AL011 耐熱防御シールド“ライドボード”(両肩部) hmLBS_AL094 可変収納型電磁推進ブースター×4(盾部) hmDSC_AL555 フレキシブル・シルク・バインダー×4(盾部) exSLD_NO006 公式型サブジェネレータ×3(機体各部) ※この他、“Weiss Valkyrja”の装備を装備・使用できる 色調:ベースは白、次いで蒼穹の色が多く、ワンポイントに金。 解説:ロッテの追加装備として開発された、軽量級ランク用の オプション武装。ロッテの活動領域を大幅に拡大する。 製造コンセプトは「白鳥の乙女としても、振る舞え!」 アーンヴァルタイプの射撃機能を活かす為に、槇野晶が作り上げた ロッテ専用の“SSS”。必然的に、装備も射撃系統に偏っており アーンヴァルタイプともっとも相性が合う様に、構築されている。 “放射配列型レーザーガンポッド”は、ロッテの躯に沿う様にして 弓なり状に展開される、横に十基並んだレーザー射撃武装である。 範囲攻撃を得意とする他、基部から駆動して発射角を調整できる。 本来電波攪乱用であるチャフと高性能のレーダー装置を応用して、 乱反射による強力なランダム射撃を行う事も出来る、優秀な武装。 “ミョルニル”は弾薬の爆発を利用して、吸い込んだ気体や液体を 衝撃波として発射する為の、特殊銃器である。射程距離は短いが、 強力な防御壁にも転用出来る上、近距離での破壊力は非常に高い。 “ギャッラルホルン”とは、マイクロミサイルランチャーである。 コンテナ型をした銃身を上下に展開する事で一斉射撃が可能だが、 閉じた状態でも、細長い専用高速巡航ミサイルでの砲撃が行える。 使用する弾は煙幕弾や閃光弾、ナパーム弾など多彩。弾数も豊富。 物理盾としても使用出来る信頼性の高い武器だが、重量等の問題で “ミョルニル”との同時使用が出来ず、サイドボードへの投下前に 換装を行っていないとならない、という致命的欠点を抱えている。 “スヴェンW”は、白鳥の意思を備えた改造型ぷちマスィーンズ。 レーザーガンを備え威嚇射撃を行いながら“SSS”を運搬する。 装着時には分離変形、胸部装甲兼ジェネレータとして装着される。 “フレキシブル・シルク・バインダー”は、耐熱・防弾・防刃等の 能力を備えた、布と鋼の特質を兼ね備えた防御用のマントである。 ワイヤー等を利用する事によって、武装に絡まず出し入れが可能。 “Grau Valkyrja”用“SSS”:“ビルガーG” 【武装データ】 Ver.:0.983g [[アンカー・フリゲート・コンセプト]] 武装:hmACA_AL014 五指制御型ロングアンカークロー×2基(盾部) hmLHG_AL022 レーザーパイルバンカー×2基(盾部) hmMFS_AL091 大型電磁推進用ブレードウィング×4基(盾部) hmSJS_AL666 ジャミングスレイヤー“ミストルティン”(両手部) ※この他、“Grau Valkyrja”の武装を装備・使用できる 装備:hmPMC_AL002 防御用可変支援機“ビルガーG”(頭・胸・背) hmABS_AL011 耐熱防御シールド“ライドボード”(両肩部) hmLBS_AL094 可変収納型電磁推進ブースター×4(盾部) hmDSC_AL555 フレキシブル・シルク・バインダー×4(盾部) exSLD_NO006 公式型サブジェネレータ×3(機体各部) ※この他、“Grau Valkyrja”の装備を装備・使用できる 色調:ベースは灰色、次いで翠色が多く、ワンポイントに銅色。 解説:クララの追加装備として開発された、軽量級ランク用の オプション武装。クララの支援能力を大幅に拡大する。 製造コンセプトは「白鳥の乙女としても、振る舞え!」 基本的に支援タイプの神姫を想定して、槇野晶が独自に作り上げた クララ専用の“SSS”。必然的に、装備もトリッキーな物が多く ハウリンタイプや第四弾神姫との相性を考えて、構築されている。 “五指制御型ロングアンカークロー”は、クララの肩から生えた、 もう一つの腕部である。DT4リアユニットの設計思想が基本だが、 その指だけで神姫の腕程に長く、また先端の爪は非常に鋭い造り。 基本的にこれを突き刺したり、相手を掴んで振り回し……投げる。 従って個人戦でも集団戦でも、運用法によって効果を発揮出来る。 “レーザーパイルバンカー”は先述したクローの掌部分に存在する レーザー発振器。本来はレーザーキャノンとしても使用出来るが、 クララの使用を想定して射撃機能を封印、白兵用武装にしている。 “大型電磁推進用ブレードウィング”も使い、高機動戦闘を行う。 “ミストルティン”とは、ジルダリアタイプ専用の特殊武装である “アレルギーペタル”を参考にして、晶が開発した特殊音波兵器。 参考元同様に、特殊な共鳴波を利用して神姫の制御を攪乱出来る。 他にも槍として使用出来るほか、隠された機能が存在するらしい。 “Schwarz Valkyrja”用“SSS”:“ファルケンS” 【武装データ】 Ver.:0.983g [[ギガンティック・ファイター・コンセプト]] 武装:hmAMB_AL077 電磁式徹甲用スパイラルバンカー×1基(左盾部) hmHCA_AL069 灼熱破砕用大型マニピュレータ×1基(右盾→右腕) hmMMS_AL000 近距離制圧用マイクロミサイルポッド×12基(盾) hmSJS_AL666 プラズマブレード“ノートゥング”(両手部) ※この他、“Schwarz Valkyrja”の武装を装備・使用できる 装備:hmPMC_AL003 防御用可変支援機“ファルケンS”(頭・胸・背) hmABS_AL011 耐熱防御シールド“ライドボード”(両肩部) hmLBS_AL094 可変収納型電磁推進ブースター×4(盾部) hmDSC_AL555 フレキシブル・シルク・バインダー×4(盾部) exSLD_NO006 公式型サブジェネレータ×3(機体各部) ※この他、“Schwarz Valkyrja”の装備を装備・使用できる 色調:ベースは黒、次いで紅色が多く、ワンポイントに金色。 解説:アルマの追加装備として開発された、軽量級ランク用の オプション武装。アルマの白兵戦能力をフォローする。 製造コンセプトは「白鳥の乙女としても、振る舞え!」 基本的に格闘タイプの神姫を想定して、槇野晶が独自に作り上げた アルマ専用の“SSS”。その武装は、零距離~近距離用が中心。 ストラーフタイプが主な装備主だが、マオチャオや紅緒等も対象。 “電磁式徹甲用スパイラルバンカー”は、工業用ドリルを想起する 形状のパイルバンカーである。シルエット通り、螺旋運動を伴って 装甲諸共相手を貫くのが主な用途である。限界使用回数は少ないが その代わり一撃の威力が集中すれば、大半の武装神姫を貫通可能。 “灼熱破砕用大型マニピュレータ”は、頻用出来ないSバンカーを 補う為に、右の盾下半分が変形して完成するガントレットである。 その掌は白熱する様になっており、握っだ対象を熔かしてしまう。 有用範囲や威力は若干劣るが、使い方次第ではかなり有用な武器。 なお、盾の上半分には“近距離制圧用マイクロミサイルポッド”が 搭載されており、これらを駆使する事でクロスレンジに潜り込む。 “ノートゥング”とは、スタンガン機構を備えた両手用剣である。 その重量とマヒ効果によって敵を制圧するのが、主な用途となる。 威力は凡庸だが、シンプル故に故障も少なく誰にでも扱いやすい。 メインメニューへ戻る
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第五話:隠道姫 砂嵐が吹き荒れる道を二人が突き進む。先頭を走っているのは人形二体を従えて疾走するコタマだ。トップスピードに関してはあちらの方が上であるようだ。対してこちらは空中での自由度が高い。それをどうアドバンテージとして活かせるか、それが鍵になりそうだ。 『まずは、だ。……もっと熱くなろうぜ』 俺はアイテムパレットを表示して、選択する。その瞬間、コースは灼熱のマグマがあたり一帯に広がる。ステージチェンジャーだ。 「あっつ!!? なんだこりゃ!!?」 『ステージチェンジャーや! なんとかする!』 その直後、返しのサーキットが発動する。マグマ地帯は一瞬でサーキットコースへと戻り、仕切り直しとなる。 『慎重に来たか。だが……』 確か、峰山の時はアイテムコストを2は残している。強気に出られるわけか。 『こっちは9残している』 次のアイテムを発動する。その瞬間、晴れ渡っていた砂漠が一気に、暗闇に包まれた。 「うおっ!? まっくらだ!?」 『ダークネス……。あかん。コタマは暗視が……』 その言葉の通り、コタマは暗さで道を見失っているような様子を見せる。どうやら暗視には適していない素体を使っているようだ。 一方、蒼貴は高い暗視能力を持っている。加えて、不死鳥の翼のおかげで自分の周りだけ、多少の明かりを得られた。これでかなり有利に持って行けるだろう。 「くっそ! 走行どころじゃねぇ!!」 『一旦引いて、蒼貴についていくんや。速度はこっちに理がある。いつでも逆転できるで』 「なるほどな。それで行くぜ」 竹櫛の意見を聞いたコタマは蒼貴の後ろをピタリと張り付くような走行を始める。これで二周目になったら攻める。そういう魂胆なのだろう。 『蒼貴。スタンバイしておけ』 「はい」 なら、それに乗り、蒼貴に備えとして武器のスタンバイをさせる。その後は併走となり、何もしないままの膠着状態となる。やはり攻撃を始めからする気でいるらしい。 コースの最後のストレートに差し掛かるとコタマは攻撃のスタンバイを始める。一体は巨大なガントレットを構え、もう一体が対物ライフルを取り出す。 どうやら、この人形達は独立行動できる自立型の代物であるようだ。マオチャオ型やハウリン型が用いるプチマスィーンズよりも圧倒的に高度な攻撃が可能であることを伺わせる。 そして二周目に突入する。その瞬間、視界が明るくなり、コースが変化する。何の障害も特徴もないコース サーキットに変わった。 「っしゃあ! 一気に攻めるぜ!」 暗闇から解放されたコタマは十字架を握ってそれを動かすと射撃型がコタマの命令に従い、対物ライフルを放つ。さらにそれに合わせるように格闘型が突進してきた。 「実質、三対一ですか……」 蒼貴は格闘型が目の前に到達する前に対物ライフルの射線から逸れる位置にサイドステップをして移動し、小判を射撃型に放った。 小判はライフルを放った射撃型の額にヒットする。そこに運よくスタン状態に追い込む直後に隙を突いて、格闘型が両腕のガントレットで殴り掛かってくる。蒼貴は上へ飛び上がる事でそれを回避した。 『黒板消しで反撃。格闘型には回避からの捻脚だ。射撃型には卵をくれてやれ』 「まだまだ続くぜ!」 三回目のコタマの攻撃が来た。持っているのは十字架に代わって飛鳥の剣「霊刀 千鳥雲切」だ。それで突きを仕掛ける。 蒼貴はそれを横にスライドする様に回避するとすれ違いざまに黒板消しを投げつける。黒板消しはコタマの顔面にヒットするとチョークの粉が煙のようにコタマの顔を覆い尽くす。 「ゲホゲホ! くそっ! セコい真似しやがって!!」 煙にむせながら蒼貴を近くから追い払おうと千鳥雲切を振り回す。 蒼貴は一旦距離をとると再び襲い掛かってくる格闘型のガントレットを受け流し、その勢いで体のバランスを崩して回転力を得るとそれを利用した後ろ回し蹴り……捻脚を放った。 「これもどうぞ」 蒼貴はスタンから復帰した射撃型にイースターエッグを投げる。放たれた卵は復帰はしていても無防備になっている射撃型にぶつかると炸裂し、卵の白身のようなものがまとわりついて機動力を奪う。 しかし、射撃型は思い出した様に蒼貴に大きな穴が穿つためにライフルを放とうとする。だが、その手は止まる。当然だった。蒼貴はすぐに格闘型が射線に割り込むように移動したのである。 「ならこれだ!」 コタマは飛鳥のガトリング「三七式一号二粍機関砲」で弾をばらまく。それに対して蒼貴は急降下して射 線から大きく離れると二体の人形を操っているであろうコタマに向かう。 「『44ファントム』!」 「ぐっ!?」 攻撃を中断してそう叫ぶと格闘型が高速で接近し、ガントレットで蒼貴を殴打してきた。その一撃は蒼貴の脇腹を殴打し、痛みで動けない彼女を吹き飛ばす。 「あばよ~!!」 そしてコタマは落ち行く蒼貴に目もくれずにその間に差をつけるべく、人形達を引き連れて、飛び去って行く。追撃よりも差を開いた後での迎撃を選んだようだ。 『蒼貴。大丈夫か?』 「ええ。衝撃を逃がさなかったら落ちていました」 俺の言葉に答えながら蒼貴は翼で体勢を立て直す。翼の自由度に助けられ、かなり早く、 飛行に戻ることができた。 『にしても厄介だ。三体で袋叩きをやれるようにしてくるとは』 「ええ。でも動いているのは二体までです」 「ああ。噂どおりではある。射撃型、格闘型を操るか、自分で行動するかだな」 あの人形について多少わかってきた。 あれは自立でもなんでもなく、コタマが操っているのだ。どういう理屈かは知らないが、指令を飛ばし、コタマの意のままに動いているのである。 噂はネットで事前に見たことがあるが、何とまあ無茶苦茶な能力である。だが、やはり欠点もあった。蒼貴の言う通り、操る、あるいは攻撃するための手は二本しかないため、実際に同時行動しているのは二体までだ。状況に応じて誰が動くかを決める必要がある。 また、格闘型はガントレット、射撃型はライフルのみで武装の使い分けはない。コタマが連射力のある武器を使ったのがいい証拠だ。 「まずは巻き返す、だ。翼の力を見せてやれ」 「ええ」 何にしても追いつかなければ始まらない。ここは一つ足止めできる手を打つ。蒼貴は俺の言葉を聞くと翼を広げ、自身を、翼をも輝かせた。 「……『焼滅の宴』」 「はぁぁっ!!」 神力解放をした蒼貴は両腕から細い熱線を大量に放つ。熱線は人形達をも巻き込んでコタマに降り注いでいく。 「な、なんじゃありゃ!? 盗賊姫にあんな隠し玉があるのか!?」 『それも焼滅の宴を拡散させとる。一本一本の威力は大したことあらへんけど……』 竹櫛は俺の意図に気付く。コタマはばらまかれる宴で足を止められ、ほとんど立ち往生に近い状態で回避を繰り返している。 そこに蒼貴が飛翔し、接近する。追いつくには遠いが、投擲をするには十分な距離は詰まった。 『塵の刃を投げまくれ。その中から卵と小判で先打』 蒼貴は塵の刃で苦無を大量に作り出すと、惜しみなく投げつける。さらに移動のルートの先にイースターエッグや小判を投げつける。 「ちぃっ! そう簡単に追いつかせるかよ!」 格闘型に自身の防御をさせるとコタマは射撃型と共に蒼貴に射撃を仕掛ける。 逃げながらの射撃はあまり正確ではなく、攻撃は蒼貴を通り過ぎていくか、投擲武器を打ち落とすかのどちらかにしかならなかった。 さらに接近する蒼貴にコタマは格闘型を操って応戦する。格闘型が突っ込み、蒼貴を吹き飛ばしにかかる。 蒼貴はそれをかわすと鎌を振るって反撃に出る。それに対しては格闘型は右手のガントレットで防御し、カウンターを放つ。 受ける蒼貴は外側へ移る事で避けると即座を苦無を投げつける。だが、それもまた、ガントレットで防がれてしまう。 『捻脚から霰舞』 俺は更なる指示を出す。 蒼貴はそれに反応し、ガントレットによる殴打でわざと姿勢を崩して勢いをつけるとそのまま踵落とし、さらに翼で上を舞う。 そこから攻撃……鋭い足の鉤爪によるムーンサルトを絡めたダンスを披露してみせた。 ガントレットで防御する格闘型だったが、蒼貴はガントレットに覆われている場所以外を執拗に狙うようにステップを踏んでいたため、さすがに防ぎきれずダンスの途中で左腕をボロボロにし、防御に使えない状態に追い込んだ。 さらに遠方からライフルを構える射撃型が見える。 蒼貴の頭を吹き飛ばそうという魂胆なのだろう。 『誘牙』 「お任せを」 それに対して蒼貴は苦無を三つ投げつける。 放たれる攻撃を射撃型は難なく回避し、容赦ない攻撃を仕掛けようとスコープを見る。 ……だが、その攻撃は実行されなかった。 スコープ越しに見えた三つの手裏剣によって。 一回目、ライフルに突き刺さり、暴発によって手ごとライフルが吹き飛ばされる。 二回目、無防備になっている所を腹に手裏剣が沈んでいく。 三回目、胸に突き刺さり、大ダメージを負わせた。 射撃型は殺到する手裏剣のダメージで限界が来たのか、そのまま動かなくなり、地面に落下していく。 『まずは一体』 「くっそ! パクリ技の百科事典か何かかよ!?」 射撃型をやられたコタマは蒼貴の悪口を言いながら、空いた手で機関砲を連射する。 蒼貴はその言葉に乗る事もなく、捻脚の要領で身体を捻って、そのまま下に降りて避けてみせた。 そしてお礼の黒板消しを進呈する。それは格闘型が割り込んできて残された右腕のガントレットで防御する事で防がれた。 さらにカウンターで左のガントレットが迫る。蒼貴はそれを左に避けて、反撃を加えようとする。 だが、格闘型は一回転してもう一回裏拳で攻撃する。 蒼貴はとっさに塵の刃で盾を作り出して防御するが、その二段攻撃に耐え切れず、また吹き飛ばされてしまう。 「もらったぁ!!」 その隙を突いてコタマが剣に持ち替えて襲い掛かってくる。この刹那的な状況では蒼貴は回避できない。 蒼貴は鎌で防御するが、コタマの勢いが強すぎて取り落としてしまった。 「なっ!?」 「もういっちょ!」 コタマは格闘型を操って打撃を仕掛けさせる。背後からの攻撃で一気に決めるつもりだ。 『剣を奪え』 対策を打ち出す。蒼貴は操るので注意が逸れている剣を握るコタマの手に手刀を放って、手放させるとその剣を取って、格闘型の攻撃を受け流す。 そのまま剣で持ち主であるコタマに攻撃する。彼女が機関砲に持ち替えて迎撃する中、塵の刃で盾を作り出して防ぎつつ、接近する。 間合いにたどり着くと横一閃を放って機関砲の砲塔を切断する。その直後、背後から格闘型が殴りにかかる。振りかぶっての一撃、蒼貴の隙をついての決定打だ。 『下に移動だ』 それに対して、蒼貴は後ろへと素早く体を倒して、下へズレる様に移動する。 そうすると決定打を与えようとしたのが災いして、格闘型はそのまま主に向かって突っ込んでいった。 「くっそ!」 「お返しします」 さらにコタマの剣を格闘型に投げつける。コタマにぶつかって無防備になっていた格闘型の背中に深々と突き刺さった。 「ぬわ~!?」 『コタマ!?』 コタマの叫び声が響く。どうやら格闘型を貫通して、コタマにも突き刺さったらしい。蒼貴は油断しないように塵の刃で苦無を作り出して、身構える。これで倒れてくれれば万々歳だが……判定が出ない。 『蒼貴、奴はまだ……』 そう言おうとした瞬間だった。ワイヤーか何かが格闘型の後ろから伸びてきて、蒼貴の手足を縛った。 「これは!?」 「かかったな!」 動かなくなった格闘型が落ちてコタマの姿が露わになる。 なんと彼女はとっさによけようとしていたのか、無傷だった。どうやら小柄なスモールタイプの素体で助けられたようだ。 そんな事より蒼貴だ。手足をワイヤーで縛られて動けない。いったい何があったというのだろうか。 「『F.T.D.D.D.』。そう呼んでんだ」 「身体が……いう事を聞かない……!?」 「ああ。んでもってこういう事もできる!!」 コタマの言葉と同時に蒼貴は自分の意志とは関係なしに自らの胸に突き立てるために塵の刃でできた苦無を向ける。あのワイヤーは拘束した相手の手足を自分の制御下に置く……つまり相手を操り人形にできる機能だった。 「とっとと自決しやがれ! 半分娘!!」 死の宣告と共に蒼貴の胸に苦無が突き立てられる。 『蒼貴!!』 俺の叫びも空しく握られた苦無は主に突き刺さる。蒼貴はゆらりと揺れると地面へと倒れる様に落ちていく。 「そのまま落ちな!」 『コタマ! ワイヤーを離さんどいて!!』 既に勝敗が決したと思ったコタマは自分が引きずられて落ちないようにワイヤーを外そうとすると竹櫛に止められる。 「えっ!?」 しかし、外してしまった。その瞬間、蒼貴が再び飛び上がって翼を広げる。その胸に傷は……ない。 「どういうこった!? 確かに制御して刺したはずだぜ!」 「ええ。確かに操られていました。……しかし、CSCやコアの制御まではできなかった様ですね」 その瞬間、俺は把握した。蒼貴は刺される直前に唯一、制御の残っているCSC……つまりはスキルである 塵の刃を解除したのだ。だから自決するための武器はなく、胸を手が叩くだけの無意味な行動となった。 俺はすぐにアイテムを使う。使うのは……『神力解放』継続のためのコンバットハイ。 「粉塵爆発って知っていますか?」 時間切れになっている神力解放を発動し直す蒼貴はそう問いかけながら、七色に輝く塵の刃の塵を自分とコタマの周囲に高濃度でばら撒く。 「な、何をする気だ!?」 「こうします……!!」 不死鳥の翼から火花がばら撒かれる。そうすると爆発が一から十、十から百と連鎖的に数を増やし、辺り一帯に起こり、爆炎が蒼貴とコタマを包んだ。 「どわぁぁぁぁ!?」 爆発の規模は大きく、煙で蒼貴達が見えなくなる。だが、その結果は数秒で分かった。巻き込まれないように折りたたんでいた翼を広げ、飛翔し続ける蒼貴と落ちるコタマ、その姿が煙の中から出てきたからだ。 『Destroy!!』 撃破判定が出た。この戦闘不能は演技でも何でもないようだ。それを証明する様にコタマのグラフィックが散っていき、消えた。 『You Win!! Winner チーム尊』 勝利判定が出て、二勝一敗の俺達が勝利したことを告げ、アクセルロンドのシステムが終了した。 これで俺の秘密は守られる。やっと肩の荷が下りたというものだ。 「だ~! 何だありゃ!? お前は狩りゲーのライオンか何かかよ!!?」 「言っている事はわかりますが、私は忍者です。あれは火遁の術みたいなものです」 シミュレータから戻ってきて早々、納得のいかないといったコタマが叫び始めた。言っていることは蒼貴の言う通り、わかるのだが、こちらはそれなりの思い付きでやっている。ゲームのように都合のいい風にはいかない。 「んなもんで済むか! おい! 二股マスター! 説明しろ!!」 「すごく犯罪くさいからその呼び方は勘弁してくれ。説明はしてやるから」 コタマから心外な称号を与えられた俺は新技を説明を始めた。 『炎塵』 それが蒼貴の新スキル、それもオリジナルだ。高濃度の塵を周りにまき、不死鳥の翼を火種にして、粉塵爆発を巻き起こす塵の刃の応用技である。 不死鳥の翼と尾による「炎」と塵の刃の「塵」の組み合わせによって自在に爆発を引き起こせる。それ故に『炎塵』という名前で用いている。 塵の刃で用いる周囲の塵も、SPも消費しつくしてしまうため、使えば塵の刃をその場では生成できなくなるものの、その威力は絶大だ。近接を仕掛けてくる相手であれば余程後退されない限り、爆発に巻き込めるため、奥の手として今後は使えるだろう。 しかし、翼がない方が塵の刃を最大限に使えたり、紫貴と連携したりするため、これはタイマン勝負で使う手段という意味合いが強い。単に威力を補うなら紫貴に任せればいいだけの話なのだから。 「おもろい技やね。それも一発逆転の大技って訳ね」 「ああ。どちらかと言えば単機で攻める時用になるな。紫貴と連携しにくくなるから普通はやらん」 「双姫主ならではの欠点ね。尊にとっては手札の一枚ってとこ?」 峰山の言う通りという事になる。俺、蒼貴、紫貴、武装強奪、武装破壊、連携、模倣技、オリジナル技。これらの手札全てが俺達なのだ。 一枚にこだわるだけが戦い方というわけではない。 「ああ。蒼貴だけの時の切り札だ。さて……種明かししたが、勝負は俺の勝ちってことでいいな?」 「むむむ……。悔しいが、てめぇの勝ちって事にしてやる。秘密も守ってやるぜ」 「それでいい。後はどうする? 今度は賭け無しで普通に戦ってみるか?」 「は? 何言ってんだあんた?」 「おかしい事言ったか?」 「秘密をばらそうしたり、いろいろ文句言った奴にそれを言うのか?」 「それに関しては、賭けで勝ったからそれをお前が守ればいい。もう一つのルールも守れるだろ?」 「もう一つのルール?」 「そうやね。むしろそっちの方が大事やし」 「な、なんだよ? 鉄子ちゃんはわかったのかよ?」 「それはね……」 俺の言葉の意味に気付いた竹櫛は秘密を知らない貞方や峰山には聞こえない様にコタマに小声で説明した。そうすると彼女の顔はやかんの様に顔真っ赤になって怒り始めた。 「なぁあにぃぃっ!!!?」 コタマは素っ頓狂な声を上げる。それはそうだ。『これでばらせばコタマ、引いては竹櫛も不利益を被る』のだから。 話の全貌はこうだ。俺の正体を竹櫛が気付いた場所は遠野貴樹のイベントだ。写メを撮った場所もそこだ。そしてそこで提示した遠野のルールは…… 『ここでの決まり事は必ず守ってもらう。 ……なに、難しいことじゃない。 一つは、俺の指示は最優先にしてもらう。といっても、大方はミスティとの対戦順についてだから、気をつけてもらえれば問題ないはずだ。 次に、ここでのことは他言無用だ。ネットへの書き込みや、ゲームセンターで話題にすることも禁止。必ず守ってもらう。 それから、神姫に記録されたバトルログも持ち出し禁止だ。ここのVRマシンを使っても、バトルログは神姫側に記録されない。だが念のため、データのバックアップは、あくまで自宅のPCで行ってくれ。帰りがけにゲーセンや神姫センターに行くのは禁止だ。もし、バトルログが必要であれば、この特訓が終わった後に、メディアで提供する。それまで待ってほしい』 つまり、俺の正体をバラすという事はその情報ソースである遠野貴樹のイベントをバラすに等しい行為なのだ。バラせば『ドールマスター』の信用もまた落ちる。 バラした場合の竹櫛達の直接的なメリットはないに等しい。むしろデメリットの方が大きすぎる。 コタマは頭に血が上っていて気付いていなかったようだが、終始冷静で、対戦を楽しんでいただけの竹櫛は初めからわかっていたのだった。 「こんの、確信犯がぁっ!! いいぜ! 普通に戦ってやる! 普通に! 全力でな!! メル! あの二股マスターをぶっ飛ばすぞ!!」 「え? あ、うん。ショウ君はいい? 双姫主とだけど」 「ああ。こういう機会だ。一回ぐらいはやっとかないとな」 コタマはメルを巻き込んでのバトルロンドに決めたらしい。戦いの後だというのに大したものである。ああいう気持ちもまた、武装神姫では必要な要素だと思った。 力にも、弱さにも流されずにひたむきに前を向こうとする姿勢。それが『ドールマスター』という形となって今あるのだろう。 「メンバーは決まった様だな。バトルロンドで対戦するか」 コタマのあり方を考えながら、彼女の戦いに応じる。バトルロンドでの戦いはどうなるのか、楽しみな限りだ。 「だが、その前に一休みとさせてくれ。何、時間はかからん。飲み物を買って飲むぐらいだ」 「何ぃ? 逃げんのか?」 「ええよ。私も飲み物を飲みたかったし」 「って……鉄子ちゃんもかよ。仕方ねぇ。待っといてやるよ」 が、その前の小休止を要求する。緊張が続いたので精神的にどっと疲れた気分にあるからだ。その要望はマスターの竹櫛があっさりOKを出してくれたおかげであっさり通る事となった。 「そうか。じゃあ、そうさせてもらおう。すまん。真那、蒼貴と紫貴を見といてくれ。すぐに戻る」 「わかったわ」 「……心配すんな。竹櫛には気にしている奴がいるし」 「な、何言ってんのよ! さっさと買ってきなさい!」 「はいよ」 少々、真那をからかうと蒼貴と紫貴を彼女に預け、俺は竹櫛と共に自動販売機に向かうことにした。 「そういえば、どうしてコタマの挑戦を引き受けたん? さっきの話なら勝負を受けなくとも私がコタマを止めておったよ?」 多少距離のある場所にある自動販売機まで歩いている間、竹櫛は俺に話しかけてきた。どうやら、話は最初から分かっていても理由まではわからなかったらしい。 「二つ理由がある。一つは『ドールマスター』に戦ってみたかったからさ。強いというのはネットでもよく耳するからな。手合せしてみたかったわけだ」 「もう一つは……?」 「賭けをした方が燃えるタイプだと考えた。あいつ、あの時に本気を出さなかっただろ?」 「あ……」 理由と本気を引き出す手段を答えると竹櫛は心当たりがあったのか、ハッとした表情になる。そう。遠野のイベントでの対戦を観戦していた時l、ネットで噂されていた手札の中で切り札である「F.T.D.D.D」……つまりは相手を操り人形にする技を使っていなかった。引いては全力を出さなかった事になる。 だから、本気を引き出すために燃えるシチュエーションを用意した。負けてもデメリットに気付いている竹櫛が阻止してくれるだろうから保険を掛けるまでもない。そのまま、コタマの言う事に流されるだけで本気のコタマと戦える展開になる。結果はさっきの対戦通りだったというわけだ。 しかし、バトルロンドではなく、アクセルロンドを仕掛けてくるという所までは予想していなかった。そのため、戦術を変更する事を余儀なくされ、チケットを使って不死鳥の尾を手に入れたり、アクセルロンド用の戦術を真那と一緒に用意することとなったのである。 「なるほどねぇ。もし負けて、私たちが言うと思わかったん?」 自動販売機に辿り着くまでに一通りの説明をすると竹櫛は納得した様子で頷いて、問いを投げかける。 「これっぽっちも思っていないな。コタマは何とも言えんが、竹櫛がそういう事をするのはまず無いと考えた。コタマが勝って天狗になって言いふらそうとしてもお前が止めてくれる。そう、確信してた」 「ありがと。……それにしてもすっごい自信ねぇ。だからそんなに強いん?」 「それは違うな。さっき言った通り、俺達全てで強さなんだ。自信も手札の一つでしかない」 竹櫛の問いに信用と自信をもって迷いなく答える。周りの要因も、自分も、味方も、全ての事象をひっくるめてカードゲームそのものだ。手札から何ができるか、山札から状況を変えるカードを引くことができるか、捨て札からどんな情報が得られるか。言い換えられる事は非常に多い。 「持ち札で何ができるか。それを考えているだけさ」 「確かにトランプのゲームで言い換えればそうなるね」 「そういう事だ。……っと、ドリンクは奢るぜ。選んでくれ」 「ええの? 真那さんおるやん」 「対戦してくれた感謝の印みたいなものだ。受け取ってくれ。あいつには別で何か買ってやるさ」 「なら、お願いしよかな。ミルクティーで」 「OK」 竹櫛の注文を受けた俺は自動販売機にお金を入れて、ミルクティーと、俺の分であるスポーツドリンクを勝って、ミルクティーを彼女に手渡した。 「ありがとね。……前にも聞いたけど、正体はいつまで隠し続けるん? 私達が言わなくても多分、いつかバレるんやない?」 「そうだろうな。ちょっとした拍子にこういう事は起きる。いつか友達にも話すかもしれん」 「その時は?」 「その時だ。縁が切れるも、切れないも、俺次第さ」 これまでの俺を武装神姫という色を入れたら、武装神姫をする前の友人からはどう見えるか、不安ではあるが、どうあがいてもそれら全てが自分になる。ちょっと小細工するだけで何かが変わるというわけではないだろう。 「……私は切れない事を信じてる。尾上君が積み上げてきているものは、すごいから」 「すごいってもんじゃないさ。友達の約束を果たしたいだけだ」 「それがすごいんよ。誰かのためにできる事があるって」 「そうか。……ありがとう」 「礼はええよ。……せやね、背比の事で応援してくれた事のお礼と思っといて」 「OK。そういう事にしておくぜ」 「さ。そろそろ戻ろ。コタマは待たせすぎると何をするかわからんで?」 「そうしよう。何をするか想像もつかん」 短いやり取りが終わると待たせている皆、特にコタマの事を考えて、俺と竹櫛はシミュレータの場所へと戻るために歩き始める。 誰かのためにできる事がある、か。竹櫛からは大事なことを学んだ事を気がする。遠野の体現してくれた絆は俺がもたらすものを、竹櫛の言葉は俺の行動の意味を教えてくれた。 いつか、守のような神姫を嫌う友達にこの事がバレたとしても、自分の成した事、その友達と積み重ねた物があれば、縁は切れないと思い始めているのを感じる。 可能性がゼロじゃないと思えるのなら、それを信じていれば、何かが変わる。隠れるだけの道から変われるだろう。 変わりたいと。まずはそう思おう。全ては、そこからだ。 第二部:15周程度の疾走 -終- トップへ 戻る
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ざわざわ、ざわざわと、たくさんの音が交じり合った、その空間は異様だった。 あるところでは勝利の雄たけび、あるところでは敗者の怨嗟。 またあるところでは黄色い賞賛、またまたあるところでは、シリアスな議論。 合間に轟くは、火薬のはぜる音、鋼のうなる音、怒号、悲鳴。 ここは神姫センター。人の欲望渦巻く魔城……。 「マスター、ワケのわからないナレーションをいれて面白い?」 カバンから突っ込むは、凛とした声。私の神姫のタマさんである。 「ああんもう、なんかこうソレっぽいの入れたらそれっぽくなるかなーって」 なるわけないじゃないか、キミは本当にバカだな!などと再び言葉のカッターをいただく私。 タマはん、ホンマに容赦ないお方やでぇ……。 そんなわけで、私とタマさんは、通学途中の駅にあるセンターに来ている。 規模と人の入りは、平日とはいえ少なくはない、駅そのものが、別の路線への連絡駅になってるせいか、安定した集客があるらしい。 かくいう私もこの駅から別の路線に乗り換えて帰宅、あるいは通学するので、良く利用させてもらっている、ありがたや。 「それはともかく、学校帰りに一人で神姫センターって、女子高生的にはどうなんでしょうね」 「ゲーセン入り浸るよりかは多少マシなんじゃないか、タバコ臭くないし」 近場にあるゲーセンはタバコくさくていけない。この時勢、全面喫煙可ってなかなかないんじゃないかしらん。 さておき、何も漫才をしに、私たちはここにきたわけじゃない。いや、漫才は毎日してるけど。 「で、マスター、今日は何しにきたんだ」 「タマさんや。今日は新作の服があるらしいのでちょっとタマさんのファッションレパートリーを増やしに」 つまり、服を買いに来ただけなのだった。 ところ変わって、神姫用の服飾売り場。 タマさんは肩の上から服を眺める。 今回の新作は、アシンメトリーと銘打たれた逸品。 左右非対称の、斜めにカットされたスカートが特徴のドレス。 赤い生地に、黒のレースはちょっとアダルティな空気をかもし出す。 「いかがですかタマ先生。私的にはいい線いってるとおもうのですが、先生には」 コレを着たタマさんを思うかべる。おお、アダルティ、大人の女! 一方タマさん、ドレスへ視線を。お、ちょっと食いついたご様子。 「……ま、アリ、じゃないかな。キライじゃないよ」 むむ、先生的には50点より上に入った程度か、さすが、お眼鏡にかなうものはなかなかありませんのぅ。 しかし、スルーするのももったいないので、私はコレをお買い上げした。うふふ、財布が軽くなるわぁ……。 「いやぁ、センターいいなぁ、ゲーセンじゃ武装の類はあってもこういう物は置いてないからねー」 ほくほくと小さな紙袋をカバンにつっこみつつ。懐の氷河期?知らねぇなぁ! 「あれはあれでキライじゃないけどね、私は。闘いの雰囲気は、好きだよ」 ううむ、タマさんはバトルスキーであるからな。武装神姫としては正しいメンタリティなのかもしれませんが。 ちょっと、タマさんに視線を落としてみる。ちらっ、ちらっ、と私を見る私の神姫。 「……じゃー、闘いの雰囲気もちょっと感じに行きますか?」 なんとなくを装ってささやいてみる。 「……マスターがそういうのであれば、やぶさかではないな。時間もないしいこうじゃないか」 いやぁわかりやすい。 そして、バトルブース。 とはいっても、そんな長いこと歩く距離でもなく、あっという間にご到着。 おーおー、賑わってる。わいのわいのと会話と、バトルのSEが飛び交う。 スクリーンに映ってるのは、アークとアルトレーネの闘い。 足に取り付けられたホイールを生かし、機敏に動き回るアーク。手には黒い無骨なアサルトライフル。 各所のコンデンサから得られる電力を生かして、低空から攻めるアルトレーネ。こちらは細身の片手剣。 武器こそ違うものの、他はすべて、初期から付属しているパーツのみ。ほぼ初期装備で立ち回るそのさまは、なんとなく美しい。 いいなー、こういうのあこがれちゃうなー。などと、私の感想。うん、時々、男に生まれればよかったなぁ、と思わなくもない。 あ、アルトレーネが勝った。決め手は近接戦闘の読み合い。 「……あの子と、戦りあって、みたいな」 ぽそりと聞こえた、静かだけど、感情のこもった声。ほんとにバトルスキーなんだから。 んじゃぁ、いっちょ準備しようかしらん。と、カバンから、紫色の布に包まれた、細長い何かをタマさんに。 「……もってきてたんだ」 「そりゃこういうところ来るんなら、タマさんは絶対1回は戦いたいなぁと思うところであるし、もってないとねぇ」 いまいち日本語になりきれない返事をしながら、私はよいしょ、とブース内の対戦スペースへ。 「あー、指名バトルだと時間と、向こうさんの名前わからないからランダムになっちゃうけどいいかなー?」 スクリーンに、神姫の名前とオーナー名も出てたはずなんだけど、私の記憶力は鶏なみなのだ!フハハハハハ! 「……まぁ、それくらいはしょうがないか。とり頭なのは今に始まったことじゃない」 ……神姫に言われるのはクるわー。超クるわー。 空は、焼けた赤い色と、日が落ちた藍色の境界ができている。 雲の作る影と、赤い輝く太陽。ひどくキレイな光景。 空気は湿気と熱気を含んで、あまり心地いいものじゃないけど、この空を見てると、なんとなくラクになる気分。 「夕方の空が綺麗やねぇ……」 ああ、なんか清々しくすらなってきた、さぁ帰ろう。ごはんも準備しなきゃいけないし! 「……負けてここまで清々しいオーナーも珍しい気がするね。私も大概だけど」 ええ、負けました。先ほどから始めたバトルは、私たちの負けでございました。 何せ、装備は刀一本で、後は服のみ。相手からすりゃもう、ナメてんのかてめぇといわんばかりの有様。 いや、そこそこいいとこまでいったんだけどね? 「まま、そういわないで。縛りプレイで負けはよくあることさぁ。タマさんのがんばりはけなす気ないし」 刀一本でどこまで戦えるのか。そんな縛りプレイというか、ルールというか、そういうものを定めている私たち。 勝率は高くない。そりゃそうだ、空は飛べない、走れはするけど、推進装置を積んだ神姫ほど早く動けない。 身体には衣服ひとつ、あたれば致命傷。武器は刀だけ、遠距離でガン攻めされたら完封。 うん、完璧だ、勝てねーな! 「ま、私もまだまだというところだね、飛び道具ごときでこのていたらく。精進が足りないな」 ふん、と鼻息ひとつのタマさん。あなた、時々ストラーフなのが間違いな気がしますよ。紅緒さんの生まれ変わりじゃありませんこと? おかげで向上心と努力はすごいんだけど。ちなみに、この縛りを決めたのはタマさん本人です。パネェ。 「んじゃー帰ろうか。今夜は餃子にするぜー、包んじゃうぜー」 「じゃあ私はキャベツ刻みでも手伝おうか。刀の修練にちょうどいいし」 「……よ、よろこんでいいのカナ?」 帰宅後、キャベツを前にするタマさんは、ひどくシュールな図であったと、こっそり付け加えておこう。 タイトルへ 次のぐだり
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第5話「白子とご主人様の戦闘準備」 「ご主人様にお願いがあります」 三人でのんびりくつろいでいたとき、白子が妙にかしこまって俺に声をかけた 「ん? なんだ? 改まって」 「実は私…。バトルに、参加してみたいんです!」 「ぎゃにぃい!?」 「し、白ちゃん!?」 まさか、こんな事を言うとは… 「黒ちゃんが毎日うなされてて、私たちにはどうすればいいのか分からない…」 「それは俺だって考えている。でも…」 「そんな、だって…。白ちゃんまで怖い目にあうこと無い!」 あわてて止めようとする俺達二人を白子はかぶりを振って静止する 「一杯、考えたんです。…私も、一度戦場に行ってみたら…何か分かるかも…」 白子が一瞬うつむくが、すぐに凛と顔を上げ 「もう、決めたんです」 その表情を見て、俺も黒子も、白子の説得は不可能だと察した しばし沈黙が流れ、やがて意を決したように 「ボクも、出る!」 「黒ちゃん!?」 「ボクが原因なのに、白ちゃんばっかりにやらせることなんてできない!」 俺は頭痛を感じたが、戦場の恐ろしさに立ち向かうことで黒子のトラウマも軽減されるかもしれない そう思えば、俺に出来ることはたくさんある 「タッグマッチの部門もある。二人ペアで参加するのがいいだろう」 「ご主人様…!」 白子がとがめるような声を出す。過保護な部分がある彼女は黒子を止めるべきだと考えているんだろう しかし、俺はそれを黙殺し、 「それと、二人に、新しい名前をつけてあげよう」 「ご主人様?」 「え? なんで?」 「せっかく試合に出ると決めたんだ。それなのに白子黒子じゃあまりにおざなりだろ?」 「あ、やっぱり自覚あったんですね…」 「じゃあ、ご主人様はボクが試合に出るのに賛成してくれるんだ!」 「ああ、いずれこういう日がくるかもと思って考えていた名前があるんだが、…マリンとアニタってのでどうだ? 白子がマリンで、黒子がアニタだ」 「マリンと、アニタ…ですか」 「いい名前です! 気に入りました!」 「そうか、気に入ってくれたか…。なら、お前達が史上最強の神姫として君臨できるような武装も用意せねばならんな…」 「は?」 「えっと?」 「クククク、待っていろ二人とも、俺が持つすべての技術を結集して究極の装備を開発して見せるぞ! フフフフフ、ハァーッハッハッハッハッ!」 「ご主人様!?」 「き、気を確かにしてください!」 なんか二人が心配していたが、俺は体中にやる気とアイデアが満ち溢れるのを感じていた ―――次の日の夜 「う~、ご主人様遅い…」 いつに無く落ち着きが無い白ちゃん…じゃなかったマリンちゃん 確かにちょっと遅いけど、まだ電車一つ分くらいしか遅れてない 「マリンちゃん…探しにいっちゃだめだよ」 ボクは面白くなって、ちょっと意地悪な声を出しちゃう それにマリンちゃんがぷぅ、と頬を膨らましてちょっと怒ったような声を出そうとした瞬間 バターーン! という、玄関を蹴り開けるような音が響き、 「ただいまぁ!!」 いつもと比べて異様にパワフルなご主人様の声が響く 昨日はひたすら紙にボクたち用武装ユニットの設計図を書きなぐって一晩明かし、 始発が動き始める時間には「早速上司を説得だ!」とか叫んで家を飛び出していったので非常に不安だったけど、一日中ハイテンションは続いたようだ 「マリン! アニタ! 所長を説得して、スポンサー契約を取り付けたぞ! これでうちの研究所が総力を上げてお前たちのバックアップを行う体制になった!」 急な展開に思わず呆れるボク。マリンちゃんは一瞬ふらついたが、すぐに気を取り直してご主人様に噛み付く 「何でいきなりそこまで話が大きくなってるんですか!?」 そんな言葉をご主人様は全く無視してまくし立てる 「二人のための武装も、マリンのは4日後、アニタのも8日でロールアウト予定だ」 完全新規設計の武装ユニットをたった4日で…。でも 「ボクのは後なの?」 「ああ、それだけでなく、マリンのはサード基準、アニタのはセカンド基準の出力になっているから、セカンド昇格まではマリン一人で戦ってもらう」 「ど、どうしてですか?」 「マリンちゃんだけ戦わせるなんて…!?」 「厳しいことだが、これはスポンサー契約の条件の一つだからどうにもならんことだ。ついでに3ヶ月以内にセカンドに昇格できなければスポンサー契約は打ち切られる」 「たったの?」 「一人でやるのに、それは短いよ!」 あまりに無茶な条件にボクは大声を出してしまう 「大丈夫、サードからセカンドに上がった最短レコードは1週間だ。まあ、シングルで、八百長試合の噂が耐えない奴だったが…。それに比べれば競技人口の少ないタッグなら3ヶ月くらいでいける、かもしれない」 「でも一人でなんて!」 「まって、アニタちゃん…。いいの、私やる。ご主人様が出来るって言ってるんだから、それを信じる」 「マリンちゃん…? だって戦うのって危ないんだよ! 怖いんだよ!」 「わかってる。でも、怖いものから逃げちゃ駄目なの。アニタちゃんもそれに立ち向かうって決めたんでしょ?」 「マリンちゃん…」 「大丈夫、サードはヴァーチャルが基本だから、危険は無い、はず」 無責任な事を言うご主人様 「ご主人様…!」 ボクは思わず咎めるような声を出してしまう。でもマリンちゃんはそれを制して 「アニタちゃん、ご主人様を信じられないの?」 「そうじゃないけど…!」 「そうだ、俺を信じろ。俺の何よりも誇れることは、技術力だ。この世の何よりもな」 そう力強く宣言するご主人様。ボクは長らく黙っていたけど 「…はい」 と頷くしかできなかった 「とりあえず、武装データは先行して完成させてきたから、これでヴァーチャルトレーニングできるぞ」 といって、押入れから訓練機を引っ張り出してくるご主人様。そんなの持ってたんですね… 「それと、これもだ。昔、知り合いの研ぎ師に遊び半分で作らせたものだが、本物の業物だ。これも信頼しろ。俺の次にな」 そういって取り出したのは二振りずつのナイフとマチェットだった。鈍く輝き、見るからに鋭そうな… 「これは…?」 「作ったのは俺じゃないが、設計自体は俺がした。製法も素材もこだわってあるから、硬度も切れ味も並じゃないぞ」 「ご主人様…、本当はボク達にバトルさせたかったの?」 「まあ、そういう気持ちも無くは無かったが、バトルにはあまり興味ないといわれて諦めていたよ」 そういって笑ったご主人様。いつも以上に生き生きしているように見えるけど気のせいだと思っておこう 「とりあえず、俺は出来る事をすべてやった。後はお前達に任せるよ」 「はーい!」 「ご期待に沿えるよう努力します!」 誤配送のときには感じなかった、ゆっくりと温まっていく高揚感。戦うのは怖いけど、ご主人様とマリンちゃんが一緒なら大丈夫 そんな気持ちがボクの心の奥底から湧き上がってくる。やっぱり、ボクも武装神姫なんだ… その夜、久しぶりに、ボクは悪夢を見なかった 続く